子規の俳句


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 「水差の図」 子規

赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり
あすの月きのふの月の中にけふ
ある僧の月も待たずに帰りけり
雲の峰水なき川を渡りけり
島々に灯をともしけり春の海
世の中に馴れぬごまめの形かな
雪残る頂き一つ国境
鶏頭の十四五本もありぬべし
鶏頭の黒きにそゝぐ時雨かな
柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺
五月雨や上野の山も見飽きたり
梅のさく門は茶屋なりよきやすみ
夕立やはちすを笠にかぶり行く
ねころんで書よむ人や春の草
小娘の團扇つかふや青すだれ
木をつみて夜の明やすき小窓かな
朝霧の中に九段のともし哉
けさりんと体のしまりや秋の立つ
親鳥のぬくめ心地や玉子酒
白梅にうすもの着せん煤拂
何もかもすみて巨燵に年暮るる
病床の匂袋や浅き春
のどかさやつついて見たる蟹の穴
昔知る水夫に逢ひぬ春の町
藤を見に行きしきのふの疲れ哉
菜の花や小学校の昼げ時
苗代やげんげの花の捨ててある
いくたびも雪の深さを尋ねけり
秋もはや塩煎餅に渋茶哉
裸体画の鏡に映る朝の秋
栗飯や糸瓜の花の黄なるあり
糸瓜ぶらり夕顔だらり秋の風
秋の蝿追えばまたくる叩けば死ぬ
夜更けて米とぐ音やきりぎりす
秋の蝿叩き殺せと命じけり
秋の蚊のよろよろときて人をさす
枝豆の月より先に老いにけり
枝豆のから捨てに出る月夜かな
枝豆や三寸飛んで口に入る
枝豆や月は糸瓜の棚にあり
草木国土悉皆成仏二句
糸瓜さえ佛になるぞ遅るるな
成仏や夕顔の顔糸瓜の屁
鶏頭や糸瓜や庭は貧ならず
をととひの糸瓜の水も取らざりき
痰一斗糸瓜の水も間にあわず
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな

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