最後の遺作?・・・(カーマウントアダプタ)

メーカーの技術遺産?というものは、確かにすごいものもあるが、中には全く理解しないまま使って設計する者もでてくるもので、技術者を腐らせる原因じゃないかとおもいます。
そんな私も、いつも同じ回路ばかりは眺めての設計を繰り返していたので嫌気もさしてきたころでした。
大抵、同じ様な回路で3回も設計をすると飽きがでてくるもので、設計する前から結果がみえてくる・・・・
設計ミスとなるのは、技術不足で知らずに起きてしまうものじゃなくて、単なるミスで起きるものばかりになってくるとつまらなく感じる直です。
そんなときふと舞い込んできた新コンセプトの設計担当がカーマウントアダプタでした。

技術者が考える製品コンセプトは大抵偏ったものが多く、一般の人が使う製品としてつまらないものなの。
そこに、現れたアメリカ帰りの多部門のアイデアが受け入れられたのである。
実は、内々には、こんなのできないかと相談されたので、こんなもんならできますよー・・・なんてネゴはあったんですけどね。

低コストと他社製品にひけをとらない高機能・・・あたらしいコンセプト。そんな企画に参画できる技術者は幸せなんでしょうね。(^-^)
基本コンセプトから、基本回路構成を設計するのはそれは楽しい作業でした。
なにしろ、私が今までに参考にして活用してきた回路やらテクニックやらをトコトン入れられることもでき、そのための実験もこまめにできた。
同じく、プロジェクトに加わった実装屋(機構設計者)もあたらしい構造も製品に力を注いだので、製品が完成したときの喜びはいままで以上のものでした。

いちばん嬉しかったのは、私が設計した回路がその後のO社カーマウントアダプタのバイブル的存在になっているという話を、やめてから(派遣を引き上げてから)聞いたことです。
一見、大したことない回路なのですが、部品の性質と基本性能を十分引き出すように注意したからでしょうか・・・
わたしにとっては、基礎技術に忠実になり、なるべく安い部品を使用しただけなのですが、うれしいものです。

でも、わたし程度の頭でが考えた回路が、1部上場の通信機メーカーO社の定番回路になるなんて、ちょっとさぼり過ぎじゃない?
もっと頑張ってほしいんですけどね・・・・・
なんか、自慢話のようになってしまったけど、マネするばかりが脳じゃなくてマネしたものを如何に自分のものにするか、努力してほしいかったことが言いたかったのもあります。

技術は、理屈(知識)だけで向上するものでもなく、また、経験だけでも向上しない・・・経験(実験)には理論の裏付けが、また、理論には実験(経験)の確証がだいじなわけで、両者のバランスが崩れていたら技術として成り立たないんだと確信しています。

この設計が携帯電話に携わる最後の物件でした。

 
 

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