Logo TrainJR全線完乗記8

最後の最後−山陽本線和田岬支線

 

和田岬への車内

 とうとうリーチをかけた。志をたててからはや18年。あと30分もしないうちにJR線の完乗を達成しようとしている。平成9年4月19日(土)午後5時45分に山陽本線兵庫駅の高架脇下にある簡素なホームに足を踏み入れた。このホームが,私にとって大いに記念すべきJR線全線完乗を達成の線区となった,山陽本線和田岬支線の発車ホームである。おそらくこの駅の高架上にある立派な山陽本線ホームを通過していく新快速の乗客のうち4人に1人ぐらいしか,このホームや列車の存在を知らないであろう。別にアンケートをとって調べた訳ではないけれども。

 なぜこの線区が最後になってしまったのかといえば,なんとなく乗る機会を逸してしまったというだけのことである。それほど乗りにくいという訳ではない。大都市神戸市内にあり,行くには比較的便利である。現にこの兵庫駅は通過したのも含めれば少なくとも20回は通っている。ここより行きにくい所は山ほどある。さりとて乗りやすいという訳ではない。というのはこの線区,列車が走るのは午前7時〜9時と午後5時15分〜9時15分だけで,さらに悪いことに休日は一日二本だけになってしまうのだ。この線区のことは一応気にはしていて,関西方面に旅行するたびに「乗ろうかな」とは思ったが,いつもプラン作成上うまくいかず,とうとうそのままになってしまった。

 完乗をこころざし始めたころ(中学時代)は,八高線の小川町駅で完乗しようかと考えていたが,ここは高校時代ワンダーフォーゲル部の妙義山行の帰路八高線に全線乗ってしまいあえなくパー。次に鹿児島本線の小川駅で完乗しようとしたが,これも社会人2年目の南九州旅行の時,このことを忘れているうちに夜行列車で通過してしまい,これもまたパー。(小川駅で完乗するためには,同駅とその隣駅との間は,他の線区を全部乗るまでは,乗らないでおかなければならない)そのあとはどこで完乗するのかというイメージが涌かないうちに,この日に至ってしまったのである。とにかく,なにはともあれこれで完乗できるのだからめでたい。

 他に人が3人しかいない静かなホームにたたずんでいると,午後5時55分旧型で色は灰色という地味なディーゼルカーが低音で唸りながら入ってきた。土曜日だから人は少ないだろうとの予想に反して,開いたドアからは大勢の人が降りてきた。瞬間的に静かなホームから,大都会の雑踏のホームへと変わる。

 再び静かなホームに戻った5時59分,地味なディーゼルカーは低音の唸りをあげてそろりと動きだす。薄い砂利,細いレール,そして線路の両側は工場と倉庫ばかり。この列車が走ってなければ工場への引き込み線としか見えないだろう。この列車はもったいぶるかのようにノロノロと走る。けれどもノロノロ走ったとしても,この線は2.7kmしかない。車窓が工場・倉庫から住宅・商店に変わったところ,時間でいうと兵庫駅を出てからわずか5分で終点和田岬駅に到着した。

和田岬駅のホーム

 「とうとう着いたか」と思った。うれしいというよりはようやく全て終えて“ホッとした”という感じのほうが強かった。別にJR線を全線完乗したからといって何がどう変わるわけではない。でもこれからの人生のなかできっと大きな励みになるという気がする。


 

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