Logo TrainJR全線完乗記3

車窓美術館─五能線

 

 私は今まで数多くのJR線に乗ってきた。その中で車窓の眺めNO1は,自信をもって五能線といえる。
 といってもその五能線はいったいどこにあるのか,分からない方のほうが多いと思う。私は五能線に4回ほど乗っている。(機会を見て5回目の乗車にチャレンジしたいと考えている)その経験を踏まえて,五能線を観光ガイド風に説明してみたい。

 

 みなさま本日は五能線に御乗車いただきありがとうございます。それでは早速五能線の御案内を始めます。五能線は秋田県の能代市から日本海に沿って走り,深浦町,五所川原市を経由して青森県の川部町を結ぶ総延長147.2kmに及ぶ路線です。なにぶんかなりの過疎地を走るためご多分にもれず大赤字で,いや失礼経営状況は厳しく,かつて赤字ローカルとして廃止候補に上がりかけましたが,なんとか生き延びて今に至ってます。この沿線は気候も厳しく冬になると豪雪・地吹雪・大浪などで運休になってしまう日が幾日もあります。
 しかし悪いことばかりではありません。この厳しい気候が,これから案内する美しい風景を作りだしているのですから。それにこの厳しい寒さと対称的な,ほのぼのとした地元のじっちゃん,ばっちゃんの会話のやりとり,きつい津軽弁・秋田弁で私には何を言っているのかほとんど理解できませんが,ほのぼのとした暖かさは良く伝わってきます。
 それでは沿線の説明に入ってまいります。始発の東能代駅を出た列車は、まず能代駅に向います。能代市の中心は奥羽本線の東能代駅から4kmほど離れているのです。そのため東能代と能代の間は列車の本数がかなり多くなってます。能代市。ここはかつて木材の集産加工地として繁栄しました。最近では木材は安い輸入材のシェアが高くなり,国内産のものがあまり売れなくなったため町は人口が減少ぎみではありますが,火力発電所・空港の誘致など地元の振興に努力しているところです。空港ということばがでてくることからも伺われますとおり,五能線沿線で最大の都市です。
 能代をでると田畑や草むらの平野を通り抜けていきます。このあたりは東北の他の線区にもよくある風景です。これだけならなんということはないのですが,ここ五能線では後に続く風景があるがゆえ,その前座として絶大な効果があります。
 大間越から青森県にはいりますが,このあたりから海に沿うようになるとともに,後方の山々も迫ってきます。この山々こそが世界遺産として知る人ぞ知るようになった白神山地です。この山々は手付かずの原生林が残され,多くの貴重な動植物もいます。本土に残された最後の純自然とも言われてます。「ここだけは道路.展望台など作ってくれるな」と思わず言いたくなる所です。
 さらに30分ほど進むと十二湖があります。この十二湖は白神山地のふもとに広がる湖群で実際には33個の湖があります。神秘的な風景と言われておりますが,私は見たことがないのではっきりしたことは言えません。今度5回目のときは是非行ってみたいと考えてます。
 列車はさらに進み“へなし”駅(すいませんこの駅とても難しい漢字を使うのですが,私のワープロは古くてその漢字を出せませんでした)にかかります。このあたりから海側にいろいろな形をした岩が見えてきます。まさに天然岩石博物館といった趣です。氷柱状,入道雲状,ついたて状などなど。またこの“へなし”駅から徒歩20分ほどの海岸に黄金崎不老不死温泉という名物温泉もあります。けっこう客がある旅館のなかにあるため,ひなびた雰囲気までは味わえませんが,まずまずの温泉です。ここの露天風呂は海岸の岩に掘られたような感じで,海風にあたりながら入っていると気分がでてきます。湯の色は畑に撒く方の黄金色です。
 15分ほど進むとこのあたりの中心地深浦です。ここから鯵ケ沢までは,まさに五能線のクライマックスです。いちばんの見所は畳状の岩が広がり,それが千畳にも及ばんということで名づけられた,千畳敷です。これも一部は車窓から見ることができます。これだけでなく諸々様々の岩が見られます。それも本当にこれが列車から見られるのか?と思うほどダイナミックなのです。さらに冬はこれらの奇岩群に加えて,日本海から打ち寄せ砕け散る荒々しい大浪も見ることができます。この風景はとても迫力があります。線路ごと持って行かれるのでは,という感じさえします。ただしこの冬景色を見たいという方は日程に余裕を持っていらっしゃることをお薦めします。なんせ運休することが少なくありませんから…。
 鯵ケ沢を過ぎると次第に海から離れ内陸に入ってきます。それとともにりんご畑が増えてきます。これが典型的な津軽の景色だなと思ったころ,五所川原に到着します。五能線の五はこの五所川原の頭文字をとってます。この駅からは津軽鉄道という私鉄が出てますが,この鉄道は客車のなかに石炭ストーブ(ダルマストーブ)がある列車があることと,大作家太宰治の故郷があることで知られてます。
 引き続きりんご畑のなかを30分ほど走ると終点の川部へ到着しますが,この駅は小さいためか,ここで終着となる列車はありません。全列車が奥羽本線に乗入れて,二駅先の弘前までいきます。
 このように地味ですが,魅力あふれる五能線に是非お越しください。あなたはきっとやみつきになると思いますよ…。

 

 

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