わたしを離さないで
アレックス・ガーランド監督/2010年作品
 カズオ・イシグロの長編小説を原作とし、アレックス・ガーランドが脚本、マーク・ロマネクが監督を担当した映画「わたしを離さないで」を見た。

他の人間の長寿のために必要な"臓器提供をすることだけを目的に"生み出され、その"時"まで健康に生かされている若者を描くとても切ない物語。

詩的で美しく、とても静かに、とてつもなく重たい内容を描く作品で、一見の価値あり。 以下、物語の内容に触れながら紹介します。

【ネタバレ】
映画は3部構成で展開する。 1978年。寄宿学校ヘールシャム。キャシー、ルース、トミーの3人は幼い頃から一緒に過ごす仲良しだ。彼らは未来の可能性を信じて日々勉学に勤しんでいるが、ある日、自分たちが生かされている理由を理解する。

1985年。18歳。それぞれに施設に分かれ、提供臓器のタイミングを待つ生活に。仲良しの3人はコテージと呼ばれる場所に移るが、ルースとトミーが恋人同士になり、キャシーは孤立。彼らとの決別を選ぶ。
1994年。再会。ついに彼らの最後の時がやってくる。短い人生の中の後悔や懺悔、そして希望… 自分たちと、自分たちが救った人の間には違いがあるのか? キャシーは問いかける。

キャシーを演じるキャリー・マリガンの抑えた中に、わずかな表情の変化で心の内を静かに饒舌に語る演技が凄い。「プロミシング・ヤング・ウーマン」の10年前にすでにこんな演技してたのね… あとの2人を演じるアンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイも見事に役を際立たせているが、キーラが性格の悪さを外見でわかるレベルで演じているのもなかなか。こんなキーラは見たくないが、ここまで嫌なヤツになりきれるなんて、役者としては素晴らしいです。

そして、この3人の子供時代を演じた子役のみなさん、これがまた驚くべき高いレベルの演技で、その後の物語をしっかり支えます。拍手!
僕のお気に入り度
きっとたまに振り返りたくなる沁みる映画です。



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