メメント
クリストファー・ノーラン監督/2000年作品
 クリストファー・ノーラン監督の出世作「メメント」。

 映画は、ある"事件"が起きた直後から始まって、時間を遡りながらそこに至るまでの経過を見せていきつつ、物語の謎を解いてみせる。初見だと最初何が起きているかわからない、でも目が離せない斬新な演出。

 主人公は過去に起きたトラブルで前向性健忘症となり、10分間しか記憶を保てない。だから、ひとつのシーンは、その10分間のひとかたまりだ。そして、各シーンの最後に記憶がリセットされて、また真っ新な状態で次のシーンが始まる…のを過去に向かって辿っていくので、これまた話がややこしい。

 しかし、このルールを巧みに使って構成された映画は、起承転結を逆さに見ながら"謎解き"する不思議な高揚感に溢れており、それをエンタテインメントのレベルにまで昇華させた監督の力量は素晴らしい。

 主人公は10分ごとに記憶をなくすので、忘れてはならないことを記録に残して10分後の自分に引き継いでいく。 確かに記憶は曖昧だが、記録もまた恣意的なものなのだ。

 クリストファー・ノーラン監督は「メメント」で知名度を高め、その後も最新作「テネット」に至るまで、時間の流れと戯れ続けている。
僕のお気に入り度
見事な構成と演出力。10年に一度は振り返ってみたい。



(C) Tadashi_Takezaki 2002