ジュゼップ 戦場の画家
オーレル監督/2020年作品
フランスの全国紙「ル・モンド」などのイラストレーターとして活躍してきたオーレル監督が10年の歳月を費やして完成させたという長編アニメーション映画「ジュゼップ 戦場の画家」を観た。

1939年スペイン内戦により祖国を追われ、避難先のフランスでは難民として強制収容所に収容され、フランス人憲兵たちの酷い虐待を受けることになった実在の画家ジュゼップ・バルトリ。彼が描き続けたスケッチの数々は、当時の収容所の凄まじい様子を現代に伝える。

そんなスケッチを基に、描かれた絵の前後に起きた出来事を紙芝居のようにパラパラと絵が切り替わっていくアニメーションという形にすることで、そこで起きたドラマを我々に見せてくれる本作。

心優しい一人の新米憲兵と友情。故郷に残してきた愛する女性への想い。 年老いた男が孫に昔話を語るという現在の部分は滑らかで鮮やかなアニメーションにして、過去の部分は動きの少ないストップモーション風に線画と水彩画のように表現するのも、いろんな意味で面白い演出だった。収容所での虐待はリアルに見せなくても十分伝わるからね…。

僕も不勉強だったのだけど、スペイン内戦中の"避難先の強制収容所"の話はほとんど知らなかったので、そういった歴史をきちんと認識する上でも、この映画はとても意味のある大切な作品だと感じた。
僕のお気に入り度
地味ながら、またふと見たくなるかもしれない一作。



(C) Tadashi_Takezaki 2021