インフェルノ
ダリオ・アルジェント監督/1980年作品
 本作は「サスペリア」の次の監督作品で、改めてこの2作を続けて見ると共通点も多い。色調は異なれど、原色を用いたカラフルなライティングや、なんでもない物の意味ありげなクローズアップ、動物、タクシー、雨、ラストに至るまで「サスペリア」で用いた要素をバラバラにして再構築したようなシーンも多くて見ていて楽しい。

  ただ、自分も「インフェルノ」を初めて観たときには、劇中「?」の連続で最後はポカーンと呆気に取られたのは事実で、もともとアルジェント監督は物語の整合性に重きを置かない作風なんだけど、本作は別格に物語がわかりにくいし、説得力がない。

  それがラストシーンのポカーンにつながるわけだが、今となっては「サスペリアのように色彩豊かなサスペンスホラーをもう一作見たい」と思うなら迷わず「インフェルノ」で良いと思えるようになった。もう物語については問わず、場面場面の華麗な舞台設定と色彩を素直に楽しむというスタンスで。

 と、さんざんに書いている物語ではあるが、「サスペリア」を受けて映画の冒頭から「三母神=三人の魔女」の設定を説明し、「サスペリア」に登場した"嘆きの母"以外の"涙の母"と"暗闇の母"の秘密を探るという「魔女三部作」の背骨を示す役割を担ったことは大きい。
僕のお気に入り度
「サスペリア」とセットで大切にしたい映像の美学。



(C) Tadashi_Takezaki 2002