快楽の漸進的横滑り
アラン・ロブ=グリエ監督/1974年作品
 なんだ、この斬新すぎるタイトル!? とか思っちゃうのですが、内容もなかなか。‬

 ‪冒頭、殺人事件が起きて、容疑者として女子感化院に収監される主人公。そこに刑事、判事、修道女、牧師、弁護士が次々と登場しては彼女の異常な趣味嗜好に巻き込まれていく。

 ‬ 「去年マリエバートで」や「不滅の女」と同じく、物語は時系列に進むわけでなく、起承転結を目指すわけでもなく、かと言って前衛的な作品として暴れてみせたりもせずに… そうだなぁ… まるで迷路になった美術館の中をぐるぐる回るように、静かに美しく、強烈に幻想的に、不連続な場面を文字通り"横滑り"させてゆく。

  映画は106分だけど、体感的にはもっと長い時間、迷宮を彷徨っていた感覚。この作品の主人公は、いわゆる昔から言われるところの"魔女"のイメージに近いかなぁ…。

  うん。やっぱ、真っ白な壁の展示室に、強烈な絵がいくつもあって、次の展示室にもまた似たようで違う絵があって、次々と展示室を移動しても出口はなく、いつの間にかまた同じ絵が飾ってある部屋に戻っているようなのだが、どうもさっきとは微妙に展示の仕方が変わっている…みたいな。そんな感覚を覚えるような映画です。
僕のお気に入り度
DVDで持っておいて、たまに監督特集しながら見たくなる映画です。



(C) Tadashi_Takezaki 2020