恋人よ帰れ!わが胸に
ビリー・ワイルダー監督/1966年作品
 ビリー・ワイルダー監督の「恋人よ帰れ!わが胸に」は、あまり多幸感がない作品です…。だから、30年以上前に一度見たっきりだったのかもなぁ。

 基本はコメディのはずなんですが、物語の設定的に笑うのが難しい。

 アメリカンフットボールの試合を生中継中、突進してくる選手にぶつかられて病院に搬送されたTVカメラマンである主人公。実はたいした怪我じゃないのに、これをネタに巨額の賠償金を手に入れようと画策する義兄の悪徳弁護士。そんな嘘を嫌がる主人公だが、彼を置き去りにして男と駆け落ちした元妻が帰ってくると言う弁護士の口車に乗せられ、良心の呵責に苛まれながらも病人を装う。 アメフト選手は、主人公に大変な怪我をさせてしまったと自責の念にかられ、元妻は賠償金だけを目当てに戻ってくる。愛が戻ったとはしゃぐ主人公だが、元妻にはほんの欠片の愛もない。かいがいしく主人公の世話をしていたアメフト選手はその両者の姿を見てますます心を痛める。 主人公とアメフト選手はいいヤツだが、ずっと悩んでいて、弁護士と元妻は徹底的に悪いヤツながら生き生きしてる。

 弁護士を演じるウォルター・マッソーの見事な演技で悪辣さは薄められ、主人公を演じるジャック・レモンの哀しくも可笑しい名演は暗さを薄めるのではあるが、いくら役者がコメディ寄りに演技をしても、根本的にそういったお話は手放しで笑えるものではなく、見ていてずっと居心地が悪い。

 最終的にはそんな悩める2人にも少し光が射す展開になるのだけど、そこまでの苦い気持ちが拭い去られるには至らず、いたたまれない気持ちのまま映画が終わってしまうのでした。 ホントにひどい悪妻を一方的にずっと愛していた主人公が目を覚ますための映画…と捉えれば、まぁ良かったと思えるんですけどね。いやはやもう…
僕のお気に入り度
ワイルダー監督作は全部まとめてキープ!なんだけど、これはあまり見ないかなぁ…



(C) Tadashi_Takezaki 2002