狼の血族
ニール・ジョーダン監督/1984年作品
 ニール・ジョーダン監督「狼の血族」を1985年のロードショー以来、久しぶりに見た。当時は大学生で、ホラー系の映画はどんな小さな規模の公開作品でも劇場で観ようと躍起になっていた。(その後、社会人になっても「地獄のデビル・トラック」や「悪魔の毒々モンスター 東京へ行く」を観るために神戸から東京まで出てきたりしていた…)

本題に戻るが、「狼の血族」は、ざっくり言えば屋根裏部屋でひとり眠るティーンエイジの少女が見る夢の物語である。夢の中の彼女は、中世の、鬱蒼とした森にほど近い村で家族と暮らしている。森の中の小屋にはおばあさんが住んでいて、少女はおばあさんの家に遊びに行き、お話を聞くのが好きだ。

おばあさんはいくつもの狼男の話をしてくれて、「眉毛のくっついた男は狼男だから気をつけなさい」と注意する。

夢の中の少女が聞いている物語がこれまた映像で展開していくため、リアルの世界→夢の世界→想像の世界と、夢の多重構造のような映画になっており、すべては想像の世界故にファンタジーであり、いかにもファンタジーであることが強調されたセットデザインになっている。

だから、観客としては少女の夢のまた夢を描くダーク・ファンタジーに付き合うような気持ちで臨まなければ、単によくわからないヘンテコ映画になってしまう。でも、なかなか作り込まれた独特の世界が面白い。

夢の中という設定だからこそできる、人が狼に変身するシーンは、他の狼男映画とは一線を画している。「狼の血族」と言えばいの一番に使われる、大きく開けた人間の口から狼の鼻先がにょきにょき生えてくるシーンは、何度見てもこのイメージを作り上げたことに感心しちゃうよね!
僕のお気に入り度
現実を離れて、しばし不思議な世界に浸りたいときにおすすめの作品です。



(C) Tadashi_Takezaki 2021