モロッコ、彼女たちの朝
マリヤム・トゥザニ監督/2019年作品
マリヤム・トゥザニ監督の長編デビュー作「モロッコ、彼女たちの朝」を観た。本作は、日本で初めて劇場公開されるモロッコの長編劇映画なのだそう。

臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミアは未婚の妊婦で、イスラーム社会ではタブーとなる存在。だから、仕事も住まいも失った彼女を誰も助けてくれない。

ある晩、路上で眠るサミアを渋々ながら家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。アブラは夫の死後、幼い娘との生活を守るために、心を閉ざし地道に必死に働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれなサミアは、外界から孤立していた親子の生活に光をもたらす。この凛として厳しく生きるアブラを演じる「灼熱の魂」のルブナ・アザバルが良い。

映画全編を通じて、モロッコの街並みや暮らし、生活の中に溢れるさまざまなもの、それらを包み込む陽射しがとても美しい。 家父長制の根強いモロッコ社会で女性が直面する厳しい現実を真っすぐに伝えながらも、心温まる女性たちの交流を描いて爽やかさも感じさせる心に沁みる良作。ぜひご覧いただきたい一作です。
僕のお気に入り度
ふと心を緩めたいときに再見したい作品です。



(C) Tadashi_Takezaki 2021