(株)SEGA/カスタマーゲートウェイ部 部長
竹崎忠さん
 大学卒業後に就職したCSKで6年間SEとして勤務した後、セガへ出向。パブリシティー担当者として、ゲーム業界やセガファンの間で有名な存在となる。現在は、顧客管理などを主な業務とするカスタマーゲートウェイ部を統轄、セガ直販のショッピングサイト「ドリームキャスト ダイレクト」を手がける。

【ドリームキャスト ダイレクト】
セガのゲームソフトやキャラクターグッズなどを販売する、セガオフィシャルショッピングサイト。10%OFFやポイントサービス、オリジナルグッズなど、ネット購入者に対する特典が大きい。また、週替わりのキャンペーンを打ち出すなど、常に新しい企画を展開し続けているのも魅力。毎週木曜日更新。
http://www.d-direct.ne.jp/


パブリシティーからWeb担当へ

Dreamcast DIRECT のトップページ。「買い物目的のサイトは重くてはいけない」とシンプルな構成

 日本人は自分の会社に対する忠誠心が強い、と言われたのは昔の話。今や、定年まで勤め上げるつもりで入社する若者などほとんどいないご時世だ。そんな中で、竹崎さんは「SEGAを離れるつもりは毛頭ない」と言い切る。

 2000年、インターネット全盛時代がやって来ると、竹崎さんはSEGAの公式ショッピングサイト「Dreamcast DIRECT」の担当になった。メーカー直販なのにも関わらず、売り上げが今ひとつだったサイトを再建するという仕事である。

 「パブリシティーでは、他社のメディアにいかに取り上げてもらうかが勝負でしたが、Webサイトは自社で作り、自社で発信できるメディア。客と双方向でコミュニケートできるし、企業メッセージを発信する上でも大切な場所だと思っています」。

 

なんと売り上げ約3倍!その秘密は…

 サイトを再建する上で、まず取りかかったのが流通サービスの改善。今までは小売店との関係で割り引きできなかった商品を、すべて10%OFFで販売できるようにし、オリジナルグッズを付けるなど、ネット購入者への特典を大幅に拡大した。さらに、客が気軽にアクセスしてくれるよう、「親しみやすさ」を強調。文章をしゃべり口調にしたほか、スタッフを「ショッピングサイトの店員」として露出した。

 加えて、SEGAシステム手帳などネットだけの専売商品を企画したり、毎週新しいキャンペーンを打ったり……。パブリシティー担当者として、ファンとの豊富なコミュニケーション歴をもつ竹崎さんならではのアイデアをすべて注ぎ込み、「見るたびに何か新しいことをしているサイト」「他では買えないものがあるサイト」を目指したという。結果、売り上げは前年比でなんと約3倍に。不況の時代にこれだけの伸びは驚異的ですらある。

 この仕事をする上でのポリシーは? と聞くと、「会社に対しては黒字保証をしつつ、ユーザーに対してはギリギリまでサービスすること」という答えが返ってきた。「結局、ユーザーの視点と会社の視点のバランスをとることが大事なわけで。1ユーザーだった経験を持つからこそできる仕事なのかもしれませんね」。

 

カスタマーゲートウェイ部の役割

専売グッズ「ドリームキャスト型リストウォッチ」。ボタンを押すとフタが開いて文字盤が現れる。来年2月28日まで予約受付中

 さて、SEGAといえば、今年初めにハード(家庭用ゲーム機器)の部門から撤退し、日本大不況の顕著な例として騒がれたのが記憶に新しい。厳しい状況の中で、竹崎さんはこれから先の仕事をどう見ているのだろうか。

 「今、僕がいるカスタマーゲートウェイ部は、今年の3月に新設された部署なんです。ドリームキャストの製造中止を受けて、必ずSEGAから離れていくお客さんが出る。そんなお客さんをできるかぎりフォローしながら、かつ新しいセガのお客さんを増やしていく。僕の仕事は、Dreamcast DIRECTやセガのホームページ、そしてパブリシティー活動を通じてそれを実現することです」。

 パブリシティー担当のころから、竹崎さんはSEGAを代表する情報発信源だった。今では、情報を伝えるという役割に、商品を届けたり客の意見を吸い上げたりという役割も加わっている。竹崎さんの提案で、セガのホームページに寄せられたユーザーの意見は、すべて社内LANで公開されるようになった。1人のユーザーの意見を、SEGAの全社員が見るというわけだ。「顧客の入り口」という部署名は、まさに役割そのものを表していると言っていいだろう。

 「SEGAの商品を買うなら、Dreamcast DIRECTが1番おトク。もちろん、今ではSEGA製品以外のソフトも販売しています。ゲームソフトのダウンロードも視野に入れていますし、これからもどんどん新しいものを仕入れていきますよ」。

 

憧れの仕事に就くためには

 SEGAのパブリシティーという職業に憧れ続け、6年かけてそれを実現した竹崎さん。「とにかくあきらめないことが大事ですよ。例えばSEGAに入社したいんだったら、今ゲーム業界以外で働いている人でも、何かしらのジャンルでトップになればいいんです。1つずつきっちり仕事をして、チャンスを待つ。企業は、特技のある人を放ってはおきませんから」。

 最後に、趣味は仕事ですか? と尋ねてみた。「趣味の延長線で始まった仕事だから、どこで線引きすればいいのか分からないけど…まあ、そんな仕事にめぐり合えた自分は本当に幸せ者だと思っていますよ(笑)」。