東沢 瀑&みな珍道中!


(98年9月12日)


ここで紹介するのは、私と澤枕 瀑氏 2人でチャレンジした奥秩父東沢遡行の珍道中(?)の報告である。
内容は瀑氏が全瀑連公式掲示板である「NoticeBoard」に「東沢よ永遠に」というタイトルにて書き込まれた報告を、氏の許可を得てそのまま掲載するものである。

乙女の滝
乙女の滝
oooooo 東のナメ
東のナメ
oooooo 西のナメ
西のナメ

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東沢よ永遠に(その1)


えーと、本日は脚がまったく上がりません(笑)。思い出して見ても昨日の
ことが本当に夢のようです。少し昨日のご報告をして見たいと思います。

午前1時過ぎ自宅を出発。緊張しているせいか眠気を催さないのが不思議。
午前4時に「道の駅みとみ」に着き少し仮眠を取る。はっと目が覚めバック
ミラーを見るとみながわ師匠がこちらへ歩いて来るのが見えた。時間は5時
少し前、挨拶もそこそこにすぐに東沢へ向かう。心臓がどきどき脈打って
いるのがわかる。

何度か沢を渡り返し、旧登山道へ上がる。すぐに大きな釜を持つ落差5m
ほどの滝が眼下に見える。これが事実上の魚止めであろうとは師匠の解説。
途中で一旦沢へ降りホラの貝ゴルジュの入り口へ立ち寄る。「ホラの貝」
とはまさしく言い得て妙である。両岸にそそり立つ壁のわずかなあわさからは
このゴルジュの深淵を垣間見ることすらかなわないが不気味な感じは十分に
伝わってくる。なんとここを直接突破して行くつわものたちもいるそうだ。

登山道はこのゴルジュを大きく巻いて進み、再び沢へ降り立つといよいよ
渓流シューズに履き替える。この感触は久しぶりだが大変気持ちがいい。
ただ師匠がピチャピチャと軽い音を立てて進むところをわたくしがやると
どうしてもザップンザップンとなってしまうのはどうしたことか(笑)。

間もなく右岸から乙女沢が合流してくる。出合いに懸かる乙女滝は秀麗の
一言に尽きる。落差50mほどであろうか。そこから少し進むと今度は左岸
から東のナメ沢が合わさる。最下段の斜面を20mほど登ると夢にまで見た
東のナメの全貌が見えた。大きい、四段落差300mという数字は偽りでは
なかった。そして写真で見て想像していたよりはるかに急傾斜であることに
驚く。考えて見ればこの滑の全体像を捉えるためにはカメラを仰角に構え
なければならないのだから当然のことではあった。ただ一つ残念なことに
この時間帯は光線状態があまりよくなかった。

ここからの左岸は傾斜角45度ほどの見事なスラブが200mほど続いている。
屋久島の千尋の滝を思わせるような風化した花崗岩の紫色の表面である。
それにしてもここに至るまで素晴らしい滑や小滝を何本越えたことだろう。
思う間もなく今度は右岸に西のナメ沢が見えてくる。出合は30mほどの滑で
雪輪の滝のような文様を次々と作りながら流れ落ちて来る。上にもさらに30m
ほどの滑が見える。気になったのは滝の流身の右に何とワイヤーロープが
垂らされていたことである。沢屋さん達は「登山道をつけるのと同じこと」と
反論するのだそうだが、自然を私物化するこのような行為は厳に慎んで
ほしいと願う。どう考えても許されることではないだろう。

ここで後続の女性一人を含む4人組みのパーティーが追いついて来た。この
後釜の沢に入ってからも再び出会うことになるのだが少々陰険な連中であった。
なるほど沢屋は山屋と違ってネクラで変わり者が多いという噂はホントなんだ
なあと妙に納得してしまった(おいおい(^_^;)。というのはまったくの誤解でこの後
出会ったパーティーはみないい感じの人達であったことを付け加えておく(笑)。

ここからいよいよ核心の釜の沢へ向かうのですが、疲労がまだ取れず深酒の
せいもあって睡魔が襲って来ました(ってもう4時半だぞ(笑))。

つづく(^_^;

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東沢よ永遠に(その2)


西のナメ沢からほどなくして釜の沢出合いとなる。どちらが本流か
議論となっている出合いだが確かに本流とされている釜の沢より
金山沢の方が水量も多く沢床もはっきりと低い。水量に至っては
3:2とする資料が多いがむしろ2:1と言った方が正確かも知れない。
うっかり通過してしまう遡行者が多いというのも肯けるところである。

釜の沢に入るとすぐに魚止の滝が現れる。落差10m、今回の遡行に
おける一番豪快な滝である。ここで先ほどの陰険パーティーが追い
ついて来たので先行してもらう。紅一点のメンバーはかなりバテて
いるようでリーダーと思しき男がしきりと激励している。まあ、それに
してもわたくしよりははるかに余力がありそうではあった(^_^;。

時間は11時を少し回っていた。すでに入渓して6時間が経過している。
ぱわふる師匠が「本日は両門まで行くや否や?」と厳しく迫った(^_^;。
言外に「時間はぎりぎりだ」と叫んでいるのがわかる。正直言ってすでに
ここまでで予想以上にバテバテであった。しかし、わたくしの口からは
「行きます。そのためにはここ(魚止の滝)の撮影は諦めます」という
感動的な発言がなされていたのであった(笑)。

とにもかくにも道は決まった。師匠はザックからザイルやらいろんな
金物やらを取り出して来た。それを見て先ほどの決心が少し鈍って
来たが、この期に及んで「やっぱりやめます」とは口が裂けても言え
なかった(笑)。観念して水流のすぐ左のスラブに取りつこうとするが
どうやっても最初のわずかな段差まで脚が届かない(笑)。先行した
パーティーのあの見るからに短足男でさえ楽々届いていたのに(^_^;。
結局ここは師匠の手を借りてクリアするが早くも先が思いやられる。

滝上へ出ても、ここの銚子口からの素晴らしい景観を眺める気力は
すでに残ってはいなかった(笑)。滝壷を覗き込む師匠をただただ
青ざめた顔をして見守るだけであった。すぐ上に落差3mほどの
滑と深い釜を見やって右へ曲がるとそこが千畳のナメであった。

延々と続く緩傾斜のスラブの上を滑るように流れ行く水。頭上は
両岸から覆い被さるような木々の緑のトンネル。こんなところが
現実にあっていいのだろうか。師匠もわたくしも思わずカメラを
出す。しかし、この滑の美しさはどうやっても写真などで表現
不可能であろうことは現像を待たないでも確信できた。ここは
わざと水の中をひたひたと登って行くとあっという間に200mの
滑は終わってしまう。

目の前には再び落差8mのスラブ滝、さらに三段が続く連瀑帯で
ある。無名であるのが不思議なくらいの美瀑である。そこからは
少しゴーロを歩くと落差5mほどの曲り滝が深い釜に水を落として
いる。師匠が左岸の巻き道を偵察してGOサインを出す。聞けば
前2回は流身のすぐ右のスラブに取りついて直接登ったそうだ。
ひょっとしたらそれをやらされるところだったのかと思い冷や汗を
かいた(^_^;。

正面からはどこが曲り滝なんだと思ったが、巻き道から眺めると
銚子口から確かに左カーブしていた。「もうすぐだ」との師匠の声
から数分もしないうちにちらちらと目指す両門の滝が見えて来た。
ついにやって来た。夢にまで見た両門の滝が今目の前にある。

素晴らしい自然の調和。想像よりもはるかに美しい合流瀑であった。
しばし我を忘れて滝を見つめる。似ているようでお互いに個性を
主張し合う東俣と西俣の流身、そして互いに注ぎ合うエメラルド
グリーンの釜...。

はっと気がついて時計を見ると12時半を少し回ったところだ。
師匠に「下降開始のリミットは?」と訪ねる。即座に「1時には
立ちたい」との返事が返って来る。下降終了後この師匠の判断が
極めて正確なものであったことを再認識させられるのであったが
この時は「あと30分しかないぢゃんよー。えらいこっちゃ」などと
大慌てで撮影を始めたのであった。当然いい絵が取れる道理は
なかったのであるがそんなことはどうでもよかった。今自分は
確かに両門の滝の前に身を置いているのだから。

つづく(^_^;

魚留の滝
魚留の滝
oooooo 千畳のナメ
千畳のナメ
oooooo 千畳のナメ
千畳のナメ

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東沢よ永遠に(その3)


撮影している間に三組ほどのパーティーが溯って来る。やっぱりここまで
溯って来てみんなうれしそうだ。あっという間に時計の針は1時に近づいて来る。
記念に師匠と並んで一枚撮る。考えてみたらずっと17-35mmでしか撮影してない。
師匠にお願いして15分だけ猶予を貰い、標準ズームでも5カットほど押さえておく。

本当になごり惜しいが下降開始の時が来た。軽く滝に会釈して戻り始める。
またいつの日かここを訪れることがあるのだろうかなどと考えながら少し
降りたところで突然三脚ベルトのバックルが壊れてしまった。こいつも
ずいぶんと自分を助けてくれた小物だ。とりあえず外れた部分をしっかりと
縛って応急処置とし先を急いだ。

千畳のナメで溯って来るパーティーと遭う。どうも女性がリーダーのようである。
さすがにこの沢を下降して来るような変わり者は珍しいようでみな不思議だと
いうような表情を見せる。沢屋・山屋の常識からは、ここまで来て甲武信岳へ
登らないということは信じ難いことなのだろう。あるいは、挫折して引き返す
途中だと思っているのかも知れない(^_^;。この後すれ違ったパーティーからは
「ひょっとして降りて来たんですか...」と尋ねられたから。

途中あらかじめ困難が予想される個所には、師匠がザイルを用意しておいて
くれたおかげで難なく突破できた。魚留の滝まで何事もなく下降を完了した。
しかし、ここから先の行程がいやと言うほど長かった。身体の疲労はとっくに
ピークに達していた。それでも、西のナメ、東のナメ、乙女沢出合いなどの
要所要所での休憩がどれほどうれしかったことか。そこで水を補給し、岩の
上に大の字に寝転がって仰ぐ空の美しさと頬を過ぎる風の心地よさといったら
言い表すすべを私は知らない。

午後3時を過ぎても続々とパーティーが溯って来る。おそらく途中の河原で
ビバークするのだろう。それはそれでうらやましい限りである。10人ほどの
一団から夫婦か恋人同士のカップル、単独行者さまざまな人々とすれ違う。
今回の遡行に関しても噂のとおり女性の進出には目を見張るものがあった。

いよいよ左岸の登山道へと上がった。師匠の判断で渓流シューズのままで
行く。最近の渓流シューズはフェルトソールの上も一般のトレッキング
シューズのような二重構造のアッパーソールとなっており、底からの
ショックに対しては申し分ない。もちろんフェルトの摩耗は避け難い問題で
あるのだが。

途中の急登で何度も停まって息を整えた。師匠はあきれてたと思うが
野門沢の時よりはいくらかましではなかったかと思う(笑)。これというのも
東沢行きが決まってから、ひたすら飲み会の誘いを拒否し節制に努めた
おかげだと思う(笑)。しかし、途中までは難所に限って師匠に三脚を
預けていたのだが、最後は預けっぱなしになってしまった(^_^;。

午後6時きっかりに下降完了。師匠の計算の確かさを改めて認識する
こととなった。くたくたに疲れてはいたが、心の中はこみあげてくる
達成感と満足感でいっぱいであった。

おわり

両門の滝
両門の滝

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まだまだ書きたいこともあるが、またの機会にしたいと思う。ぱわふる
師匠には感謝してもしつくせないないが、この場をお借りして改めて
お礼を申し上げます。

そうそう、西のナメ沢出合いの少し先で古い熊の糞を見かけました。
まあ、これほど明るくて両岸から見通しのよい沢で鉢合わせすることは
ないと思いますが、沢は間違いなく彼らの重要なテリトリーであると
言うことを再認識しました。

気のついた点と反省点

(1) 沢での行動は必要十二分以上に時間の余裕を見ること
(2) 渓流スパッツ(プロテクター)はかなり有効
(3) 初心者はヘルメットもあった方がいいと思う
(4) 徒渉を大儀に思ってはいけないが無駄な徒渉も避ける
(5) 一にフリクション、二にフリクション、三、四なくて...
さかいやスポーツの兄ちゃんが沢の基本はこれに尽きると
言ってたがそのとおりだった(笑)
(6) カーボンファイバー製三脚がベストと判断せざるを得ない
買えるかどうかは別問題としてだけど(^_^;

まだまだ沢山あるけどこんなところで。

 

 


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