泌尿器科医・木村明の日記

木村顔

腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意な超音波専門医。


前立腺肥大症勉強会@横浜ベイシェラトン


私が30年前に泌尿器科医になった頃の前立腺肥大症の治療薬の定番だったエビプロスタットが、発売40周年とのことで、記念講演会が昨日開かれました。

まだ新年早々の土曜日。しかも雨。毎度おなじみの頻尿前立腺肥大症の講演。予想通り参加している医者は多くありませんでした。でも、私が出席する事にしたのは、医局の後輩で今は某大学の教授をしている先生が演者だから。

昨日の演者はこの先生ともう一人。泌尿器科医を対象とした話で、基礎的なアドレナリンレセプターの話がいっぱい。ついていくのが大変、勉強になりました。

お二人とも、海外の論文のサマリーだけでなく、自分のデータを示せるところがプロ。

アメリカは変な方向に向かっている、というのが私が感じていた事。でも、私の後輩は、アメリカの推進役がやろうとしていることを肯定的に説明してくれました。

畜尿期に膀胱が不随意収縮するのは不安定膀胱と言いますが、この診断には膀胱内圧測定が必要です。過活動膀胱は症状だけから診断してよい病気です。

アメリカのある研究者グループが提唱した膀胱内圧測定なしで診断できる「過活動膀胱」という病名を、痛い検査なしで薬を処方できる便利な病名として流行らせた人たち

そのグループが、ハルナールとバイアグラの合剤を、「男性骨盤健康(male pelvic health)」のための薬として有効と、昨年春のアメリカ泌尿器科学会で発表。

排尿困難があってEDの人に、問診表のスコアだけで、「男性骨盤障害」見たいな病名をつけて、ハルナールとバイアグラを処方するなんて、と感じました。

でも、昨日の演者の先生の解説は明瞭でした。バイアグラレビトラシアリスには、膀胱の排尿筋をリラックスさせる働きもあるようです。シアリスのように長時間作用型の薬が出てきたことで、ED治療薬が過活動膀胱治療薬として期待されているのです。

つらい検査をせず、症状を和らげる薬を処方してあげる事が今の流れなのだそうです。
木村明の日記
2008年1月13日