兼子次生の記録学研究
http://homepage3.nifty.com/Steno/001c/index.html(ソクタイプ資料集)

Tironian Noteswriting
by Mr.T.Kaneko

クリックすると→ 「Guest Book


速記実演・日本語の朗読(摘記法)         

「いったいどこまで、カティリーナよ、われわれの忍耐につけ込むつもりだ」

                                                               写真撮影・兼子次生

(『カティリーナ弾劾』小川正廣訳、岩波書店)と書いたのです。
これは、Quo usque tandem abutere, Catilina patientia nostra ? ) でした。
ティロは摘記法により、頭文字を取り出し「QPN」と蝋板にスタイラスでかき込んだんです。

では、ラテン語の朗読はどんなものだったのでしょう?
▲をクリックしてお聞きください。
書くことの歴史・Italy元老院でのキケロの演説
↑上をクリックして大画面でごらんください。
イタリア元老院でのキケロの演説の画像を見ることができます。
(動画は、接続回線によってはページを開くのに非常に時間がかかります。その場合は、リンクバーを右クリックし、「対象をファイルに保存」を選択して実行し、後でゆっくりごらんになるという方法がお勧めです。)

3分53秒のビデオです。
Italyのトリブルツィオ先生の制作・解説〈イタリア語)です。
このページをスクロールするとトリブルツィオ先生からのメールを紹介しています。

速記の情報  2005/08/13(Sat) 21:50


ブラジルの引退された速記者からホームページを開いたからという情報が来ました。
日本のサイトもリンクされています。
なかなかセンスがよくて、脱帽です。
速記を習っている若い方も紹介されていて、すばらしい。
先生方は、皆さん、プロフェッサーと書かれているのですが。
これもうらやましい。
Prof. Waldir Cury (RJ)さん。英語読みなら、ウォールディァ・カリーさんですが。
http://www.taquigrafia.emfoco.nom.br/index.htm

ブラジルの速記
カリーさんに聞いたら、すごい興味深い返事が来ました。


Dear Mr.Tsuguo Kaneko.I am glad you liked my site.Answering your question,
according to a Research we made in the year 2000, the following systems of
shorthand are being used in Brazil, today:2000年の調査で、ブラジルでは以下の
方式が使用されている。
Maron マロン Taylor テイラー Marti マルティ Duprat デュプラト Leite
Alves レイテ・アルベス Galestra ガレストラ Frei Adauto de Palmas フレイ
・アダウト・デ・パルマス Fernando フェルナンド Moreira モレイラ Arlindo
Lima アルリンド・リマ Estenital エステニタル Pitman ピットマン Gregg 
グレッグ 
Leite Ribeiro レイテ・リベイロ Davi Gauterio ダビ・ガウテリオ Rogerio
Mascarenhas ロゲリオ・マスカレンナス Scolastico スコラスティコ Nelson de
Oliveira ネルソン・デ・オリベリア 
Albernaburgos アルベrナブルゴス Ecletico do Prof. Burgos エクレティコ・ド
・プロフェッサー・ブルゴス Duploye ディユプロワエ 
As you can see, we have 20 systems of stenography in use in Brazil. ごらん
のようにブラジルでは20方式が使用されている。(読み方が間違っているかもしれ
ません。気づいた方は訂正をしてください)Best regards! Prof. Waldir Cury I
am a retired  parliamentary stenographer and a teacher of Stenography, in
Rio de Janeiro, Brazil.  I invite you to take a look at my site of
Stenography I launched 2 months ago.Best regards! Prof. Waldir Cury

http://www.taquigrafia.emfoco.nom.br
ブラジル語の速記は創案者の名前をつけています。これは速記界の常識ですね。私が使用しているマロン式は創案者の個人名です。 Afonso Maron アルフォンソ・マロンさんがつくりました。ブラジル語の速記は全部幾何派です。幾つかは、草書派の線を使うけれど、それらはミックス式と呼ばれます。一番たくさん使われている方式は、the Leite Alves system レイテ・アルベス式。国会、裁判所で全部の方式が使われていますよ。電子式機械速記はブラジルではほんの少ししか使われていません。大多数はペンショートハンドです。 首都ブラジリアにはパウロ・ザビエル教授が責任者のとても大規模な速記教育訓練機関があります。そのサイトをごらんください。授業中の写真などがあります。サイトは: http://www.taquibras.com.br です。もう一つ、興味深いサイトは http://www.cbtonline.com.br で、マスカレナス教授 Prof. Rogerio  Mascarenhas のページ。彼はロゲリオ・マスカレナス式の創案者です。日本の速記のサイトで興味深いものがありましたら、お知らせください。Prof. Waldir Cury

アメリカ人法廷速記者の日本での冒険 ジョディ・ハーモン(7月5日)
☆この記事は「兼子次生の部屋」のゲストブックでも紹介されています。
ジョディ・ハーモンさんは女性速記者で紹介HP↓

        http://www.americanrealtime.com
日本では物事が万事異なっているというのは、普通の陳腐な言い回しになってし
まった。全く決まり文句だ。もっとも、これで的を射た言葉が語られたことはない。
 私は1982年感受性の強い17歳のときに速記の仕事を始めた。ニューヨークでは公証
人になれる法廷年齢の18歳になるまで、私のボスは速記録に副署名して誓わなければ
ならなかった。2000年に旅行とリアルタイム型速記への強い情熱から、国際的なフ
リーランス活動を始めることになった。外国の文化を経験したいし、他の法廷速記者
と会いたいし、アメリカ以外の国で速記がどのようなものであるかを学びたいと思っ
ている。だから、頻繁に外国の速記事務所を訪問したし、そこでとてもたくさんの友
だちができて、地球上で目を見張るばかりのフリーランスの仕事の機会を得ることが
できた。
 旅行で日本へ初めて来たとき、当たり前のように英語を話す法廷速記者の仕事をさ
がした。インターネットでさがすことができないまま、私はビル・ライス、ポール・
デビリオ−−日本に長く滞在している司法ビデオグラファーの資格を持つ彼らと一緒
に仕事をやったらおもしろいかもしれないと、ビルが考えたので、数日後、3人が東
京で会って、専門分野を異にするみんなが、ちっぽけな市場で仕事をすることになっ
た。こういう思いつきが日本で最初の法廷速記事務所誕生へつながった。
 日本における社会的、司法的、文化的挑戦のあげくは落胆につながり、2人との
チーム意識が何度も個人的にも、仕事的にも困惑する私を助けてくれた。例えば、だ
れかに会うという簡単な行動をとるときにも…。日本人は名刺をよく交換するが、両
手で名刺を差し出し、深々と頭を下げる。このような儀礼的なマナーがあらゆること
のきまりであり、話を聞くことが宗教的な儀式であった。日本に着いたとき、そのよ
うな習慣を事前に知っておきたかったと思ったほどである。
 アメリカにいたときは、デポジションの前に関係者の名刺を集めておいて、自分の
前に配席表のように並べていた。そのとき、例えば、赤いネクタイ、あるいは青シャ
ツといったふうに、手早く、ちょっとした見分けのために特徴をメモ書きしていた。
そういうふうにしていたから、もし出席者がつとめを終えて、ほかの部屋で昼食を
とったあとでも、私はだれがだれかわかった。私が担当した公判が手早く終わったあ
と、通訳の1人が言った。日本人の出席者のみんなが名刺の上に書いているのを見
て、あっけにとられていたと言うのだ。明らかにだれかさんの名刺にしるしをつけ
る。それはあからさまな侮辱でないにしても、これは失礼だと考えられている。私は
何度もそうやっていたから、そう言われているのを聞くと、肝を冷やした。こういう
体験を通じて、私は日本の文化がどのように違うかということがわかったし、日本で
適切かつ十分にやり遂げるのにはどうすればいいか熟知している仕事の仲間がどうす
れば私がはみ出さないでやることがどれだけ大切かを教えてくれたのかもしれない。
 日本で一番興味深い挑戦は、法廷速記者として、皮肉にも司法関係のものであっ
た。1つの例外を除いて、実際には日本ではデポジションは非合法である。外交条約
に基づいて、デポジションは東京のアメリカ大使館または大阪のアメリカ総領事館で
行うことが許可されている。そういうところには、その目的のために会議室が設計さ
れている。しかし、こうした状況は、出席者に対する厳しいビザの要求、積み立て方
式ではないデポジション室料、時間制限、週末・祭日に使用できないことなどといっ
たチャレンジングな事柄がまつわりつく。これらの規則は保安員、あるいはアメリカ
海軍によって実行される。
 海軍が午後5時1分にビルの外へ私を送ってきたとき、私の装備は荷造りどころで
はなかった。これらの規則がどれだけ厳しいものかと味わった。ホテルの部屋で規則
を無視してデポジションをしたら、追放されるような弁護士と法廷速記者の話がたく
さんある。
 デポジションは通訳がついているが、速記は日本語の音声特性のゆえに難しい。2
名の通訳が1時間ごとに交代する。だから、やっと通訳の話しぶりになれたころ、交
代するというわけである。
 それから、通訳をチェックする課題がある。私が聞いているとき、主通訳の翻訳を
ダブルチェックして、間違いがあると確信したとき割り込んでくる。しょっちゅう、
通訳が日本語で闘っている間、3〜4分間記録から離れる。皮肉にも23年間も弁護
士のいたずらを見てきた私は、ひそかに通訳のチェックが可能な限り頻繁にじゃます
るように言われているのではないかしらと思うほどである。
 ほとんどのデポジションはリアルタイムで行われていて、この仕事が最も光り輝い
ているのを感じている。日本語の文章構造は私たちのと反対である。日本語の動詞は
よく文末に来るが、英語では動詞は文の初めの方にあらわれる。また、日本語の話し
手は典型的に代名詞を省き、複数形も話しているときに省く。こういう差異は同時通
訳をほとんど不可能にする。リアルタイム以前に、通訳はそれぞれの文を通訳するた
めに用紙に書き出す。それはデポジションをおくらせる作業である。しかし、リアル
タイムでは通訳は全部の陳述を見ることができる。そして、同時に通訳できるので、
それはデポジションをずっと早く進行させることになる。
 日本におけるもう1つのチャレンジは、支援体制と消耗品の不足である。速記機械
の修理センターがないし、英語を話せるコンピューター店が少ないし、技術サポート
のサービス時間帯が十分でない。だから、数台の予備の速記機械を持つようにしてい
るし、ノートパソコン、ソフトのコピー、それらがいつでも稼働するように定期的に
取りかえるようにする必要があることを知った。プリントひとつにしても問題があ
る。なぜなら、A4用紙しかないからで、用紙を裁断するか、アメリカに送ってプリ
ントしてもらうしかない。こういうチャレンジングなことが、速記の仕事の通常のス
トレスに加わる。日本では法廷速記者としての生活を何かつまらないものにしてい
る。
 日本人は親切だし、礼儀正しいし、うやうやしい。だれも切迫感を感じているよう
ではないし、あわてるようなことはない。もし困っているように見えたら、英語を話
せない人でも立ちどまって助けてくれる。のろのろ運転や渋滞に怒って、サイレンが
鳴り響いたり、自動車のクラクションが大きな音を立てているのを聞いたことはな
い。携帯電話は振動モードにセットされているし、日本人は外へ出て話をしようとす
る。日本の街は汚れていないし、比較的安全だし、豊かな歴史と文化を持っている。
最後に、絶対ではないが、少なからず食べ物は天国みたいだ、すばらしい。
 言葉には悪戦苦闘しているが、日本人は非常に我慢強く耐えている。私が入ってい
るアパートのサインは日本人が英語と悪戦苦闘しているように私も平等に我慢しなけ
ればならないということを示している。どうぞ、そういうメイドを利用してくださ
い、というわけだ。
 日本での速記する際の文化的挑戦、制約にもかかわらず、この魅力的な文化の中で
生活し、仕事をする機会を得たことに毎日感謝している。

ジョディ・ハーモンさんは、RMR、CRRという資格を持ち、アメリカン・リアル
タイム・コートリポーターズ・ジャパンの社長である。RMRはリアルタイム・メ
リット・リポーター、CRRはサーティフィケート・リアルタイム・リポーターとい
うリアルタイム対応速記士の資格。

1)デポジション:アメリカの裁判では証人の発言を速記で記録化して提出したり、
ビデオに撮影して裁判所へ提出する。そのため、日本に来て、日本人の証言を通訳を
介して作成する仕事がある。

2)ジョディの日本語分析:
(日本語の一般的な音声)
あし、あわ、ばし、がわ、がや、いー、いし、じ、じま、じみ、かみ、かわ、くら、
まき、みた、もし、もと、むら、おし、さか、さき、〜さん、さわ、した、うし、
や、やま、よし、
(類音・地名)
きょうと、きゅうしゅう、きょうばし、かっぱばし、あさくさ、あかさか、あさか、
あさくら、あずさわ、しこく、しんじゅく、しんばし、しんまち、しながわ、しらか
わ、しろかね、しらやま、しぶや

以上の記事はアメリカ速記者協会の機関誌6月号に掲載されたものを本人の許可を得
て、兼子次生が翻訳した。(以上)






今よみがえる古代の速記文字、世界初公開!
                街の速記学者の昔話です。

 HPオーナーに宿題をいただき、考えました。
 速記の初めとされるティロの速記符号を動画で世界初の発信にしましょう。
 
ティロは、マルクス・チュリウス・ティロという名前で、奴隷の子どもでした。戦
争で負けた父が奴隷になったのでしょうかね。
ティロは主人のキケロ家で、ティロと同じくらいの年齢だったせいもあり、一緒に
学問を勉強したようです。日本でも古い世代のいいおうちですと、苦心の学友という
特別格の家庭教師を雇って、勉強させたのです。もちろん、バカな家庭教師はだめで
す。頭のいいことが条件ですよね。
 兄弟のように育てられたキケロと奴隷のティロ。キケロは大きくなって政治家と
して活躍します。演説をするとき、キケロは文章を練り上げます。秘書のような役割
で、ティロは演説の記録などでキケロをささえたのです。後年、奴隷の解放年齢に達
すると、ティロは市民権を得ます。自由人になるわけです。
 裁判の弁護や政治の演説でキケロは多くの講演集を残していますが、それはティロ
という速記ができる秘書がいたからです。
 紀元前63年11月8日の元老院において、キケロは政敵、カティリーナの陰謀を
暴く演説をいきなり切り出しました。
 冒頭の言葉は、「いったいどこまで、カティリーナよ、われわれの忍耐につけ込む
つもりだ」(『カティリーナ弾劾』小川正廣訳、岩波書店)と書いたのです。これ
は、Quo usque tandem abutere, Catilina patientia nostra ? ) でした。
 ティロは摘記法により、頭文字を取り出し「QPN」と蝋板にスタイラスでかき込
んだんです。
 ティロのころは、文字は板に蝋を流し込んだ蝋板(タブレット)に、スタイラスと
いう鉄製の筆記具で引っ掻くのでした。
 速記者は大勢養成され、親方ティロの指示に従って速記に携わりました。
 20世紀中ごろまで、速記はインテリジェンスの象徴でした。古代にはローマ皇帝
にまで出世するものが出たほどです。20世紀には、有名なイノベーションという言
葉をつくったシュムペーターのような学者が研究活動のために速記を利用していま
す。この話題はいずれ紹介しましょう。
 おもしろいことに、ギリシャ、ローマは文字を持っていなかったので、最初に速記
が書いたのは口語、話し言葉でした。多分、日本の万葉仮名で書かれた言葉はその当
時の音声に忠実に書かれてたことでしょう。だから、上代の母音を古代朝鮮語にな
らって8母音と陰陽の対比であったとするのは、わかりそうな話です。
 文字の誕生のころは、話をそのまま書きとめることが目的でしたから、速記は文字
の働きを補うものであったわけです。つまり、速い話を書きとめるための特別の道具
です。
 ひとたび言葉が固定されると、時間の流れで口語はくずれて多様化していき、話し
言葉と文字で書かれる書き言葉が分かれていきます。中世になると、ラテン語は書き
言葉になり、話されることはなくなりました。話し言葉を書くのが速記ですから、し
たがってラテン語の速記も役目を終えることになるわけです。

 ああ、速記っていいなあ、速記ができてとてもよかったよ! 

 科学技術に強いジャーナリスト 兼子次生
(現在、社団法人日本速記協会会員、アメリカ速記者協会会員、IFIPインテルス
テノ中央委員・ジャパングループプレジデント、中国速友)
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     スタイラス
先週土曜日(2004.10.9)は日本科学記者会の同窓会に出たあと、
京都の京都ギリシャローマ美術館(もしか、博物館)に行ったのです。
そこで、見た2つの像。羽根をつけたエンジェルは、右手に
1本のハシみたいなものを持っているではありませんか。
ナバールの速記の歴史の本には羽根をつけたエンジェルが速記をしている絵が載って
いました。
↓持っているのはまさしくスタイラス。


写真2枚は羽根をつけたエンジェルが右手にスタイラスを持っている像です。アップと全体像。

(トリブルツィオさんのメールで、スタイラスの素材は木、または石と書かれていたよ
うに思います。
ナバールの本には後世でしょうか、複雑なデザインで、鉄でつくられたような図が
載っていたので、よく確かめないで、鉄製と書いていたのですが、木製にとりあえず
訂正したいと思います。)
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ドイツのドレスデンにある速記博物館での展示物

     司書のポンプさんが紹介してくれた速記のおもちゃ


さいころみたいな6面に、速記の符号が書かれている。正しく読んでいけるように並べるおもちゃみたいです。

1辺が3センチくらいでした。あまり汚れてはいませんでしたね。

速記文字画も、たくさんあります。私は中根正雄先生に書いていただいたものをその博物館へ贈呈しています。

速記関係者の皆さん、ドイツ旅行の際にはぜひドレスデンへ行ってください。

近くには、焼き物のマイセンがありますから、そちらにもぜひ立ち寄ってください。
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兼子次生の著書より2004年度の大学入試問題が出題されました

問題と解答をご紹介させていただきます。(管理人)

(入試問題)

V 次の文章を読んで、あとの設問に答えなさい。(30点)

 

 文字は自然発生的なプロセスを経て所有されたものであって、文字を持てない文明もあった。例えば、(a)古代ギリシャはフェニキア人から交易を通じて文字という価値を獲得したし、日本人は大陸から文字を得た。そうした文字は最初誕生したときには、絵文字であったと言われる。

 現在、世界最古の文字は、(b)メソポタミアの南部ウルクでウルク第4層と呼ばれる地層から発見された線状の表意文字である。紀元前4000年、(c)古代シュメール人は農業などの記録をつけるため、生乾きの粘土板に絵文字を刻んでいた。絵文字は紀元前3000年ごろになると、90度回転して真横に変化しながら単線化して、(d)楔形(「くさびがた」ともいう)文字になった。さらに、それは表意文字から表音文字へと変化していった。

 一方、(e)エジプトでも、シュメールと同じころに、聖刻(hieroglyph)文字が生まれたとされる。エジプトの文字は、大理石に彫られた美しい象形文字としてよく知られ、パピルスにも美しいヒエラティック(hieratic)という筆記体が用いられた。しかし、エジプト象形文字の末期に至ると、一般人は、ヒエラティックがさらに崩れたデモティック(demotic)と呼ばれる速記体のような書体を使っていた。

*出典:兼子次生著「速記と情報社会 古代ローマから21世紀へ」、中央公論新社、1999年、3頁。なお、原文は縦書きである。掲載に当たっては漢数字をすべてアラビア数字に改めた。その他の標記・内容は原文のままとした。

 

問1 下線の(a)について、以下の各問いに答えなさい。

(A)次の文章は、ギリシャ世界の誕生について述べたものである。空欄@〜Eに当てはまる適語を次の頁の語群 @〜Iから一つずつ選びなさい。

 

 紀元前3000年の初めごろ、オリエントの影響を受けて開かれたエーゲ文明は。大別して、ギリシャ本土の( @ )半島を拠点とするミケーネ文明、( A )宮殿跡等の調査で写実壁画のほか青銅器や線刻文字(線文字)を持ったオリエントとは異質な文明であったことが判明している。一方、ミケーネ文明はドイツ人考古学者( C )の調査もあり、紀元前2000年ごろから定住し始めた( D )人がオリエントやクレタ島文明の影響下に生んだ文明で、オリエント的な専制国家に発展する要素があったことが判明した。

 なお、( E )の調査で、エーゲ海の小アジア側における( F )文明の存在もわかっているが、これら文明は結局、南下した別のギリシャ人によって滅ぼされた。

 

@エヴァンズ  Aシュリーマン  Bヴェリントリス  Cクノッソス  Dドーリア    Eトロヤ  Fアカイア  Gペロポネソス Hイベリア Iミロ

 

(B)前問(A)の問題文中にある下線部で「別のギリシャ人」としているのは、エーゲ海周辺に早期に移住した先住民族もまた現在のギリシャ人を構成しているからである。彼らはミケーネ文明が滅ぼされた紀元前8世紀ごろからポリスを成立させていくのだが、スパルタのように先住民を征服して建設したポリスよりは、アテネのようなポリス建設の方が一般的であったようである。地方ごとに貴族など有力者が中心となって進められたアテネ型建設形態を一般的に何と呼ぶか。@ 〜 Cから選びなさい。

 

@ペルセポリス Aメトロポリス Bシノイキスモス Cコスモポリンタン

 

(C)なお、前問(B)のようなアテネ型形態で建設されたポリス社会では、共通言語や宗教問題、オリンピアの祭典、隣保同盟等を背景に一民族としての意識を失うことはなかった。では、彼らは異民族のことを何と呼んで自分たちと区別していたか。@ 〜 Dから選びなさい。

 

@ペリオイコイ Aヘレネス Bヘロット Cヘラス Dバルバロイ

 

問2

 下線部(b)の「ウルク」は現在のイラク南東部に当たり、ギリシャ語の”メソポタミア”が意味する「二つの川の間」に位置していた。では、その「二つ」の川のうち南側を流れる川は何と呼ばれるか、「ウルク」近くを流れるその川の名前を、@ 〜 Dから選びなさい。

 

@ヨルダン川 Aユーフラテス川 Bドニエプル川 Cティグリス川 Dプラマプトラ川

 

問3 下線部(c)の「シュメール人」によって建設された代表都市には「ウルク」のほか、問2の川のさらに下流域に存在した「ウル」がある。往時の彼らは豪華なシュメール文化を形成していたとされているが、絶え間ない戦争のために一般市民が疲弊し、結局はセム系民族によって滅ぼされてしまう。紀元前24世紀に現在のイラク・シリア一帯に存在した都市国家を統一したこのセム系民族を何というか。次の @ 〜 Dから民族名を選びなさい。

 

@ヒッタイト人 Aエジプト人 Bアラム人 Cアッカド人 Dヘブライ人

 

問4 下線部(d)について、以下の各問に答えなさい。

(A)シュメール人が「絵文字」を抽象化して作った「楔形文字」は他のセム系民族にも使用された。「楔形文字」によるハンムラビ法典碑文を残した国家を、 @ 〜 Cから選びなさい。

 

@アッシリア語 Aミタンニ王国 B古バビロニア王国 Cカルディア

 

(B)前問(A)の問題文で掲げた「ハンムラビ法典」の石碑は、20世紀初頭のスサ(イラン南西部)における発掘調査で発見された。かつてメソポタミアの諸都市を破壊した異民族により戦利品の一つとして持ち去られていたのである。ちなみに、スサとは、かつてアケメネス朝が首都としたところだが、メディア王国を滅ぼしたアケメネス朝を興し、オリエントを征服した人物は誰か。その人物の名前(王名)を、@ 〜 Cから選びなさい。

 

@キュロス2世 Aネブカドネザル2世 Bダレイオス1世 Cフィリッポス2世

 

問5 下線部(e)について、以下の各問いに答えなさい。

(A)1822年、フランス人言語学者シャンポリオンの努力でロゼッタ石に刻まれたヒエログリフが解読された。ロゼッタ石と名づけられたその石は、そもそもプトレマイオス朝時代における式典の記録を記したものであった。では、紀元前30年、クレオパトラの軍を打ち破り、プトレマイオス朝を滅亡させた人物とは誰か。@ 〜 Dから、その人物名を選びなさい。

 

@アントニウス Aポンペイウス Bオクタヴィアヌス Cカエサル Dレピドゥス

 

(B)エジプト新王国時代(第18王朝)の王、アメンホテプ4世の時代に生み出された写実的な芸術を何というか。@ 〜 Dからその名称を選びなさい。

 

@ミニアチュール Aガンダーラ美術 Bスキタイ文化 Cアマルナ美術 Dグプタ美術

 

(C)古代エジプト文明の特色を示す事柄を、次の@ 〜 Dから選びなさい。

 

@「死者の書」 A六十進法 B選民思想 C易姓革命 D輪廻思想

 

(広島国際大学2004年入試出題前期(ハイスコア方式)世界史出題 社会環境学部 人間環境学部 医療福祉学部 看護学部 保健医療学部 薬学部)

 

正解

3 2 5 3 2 8 0 2 1 4 

6 5 1 3 5 2 6 9 1 2 

1 5 6 4 2 3 4 2 3 1 

5 3 2 1 5 8 4 1 2 7 

6 3 5 2 4 3 1 3 4 1                       以上

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

イタリアのジャン・パウロ・トリブルツィオさんとのメール紹介
Dear Mister Kaneko san,

 I give you herewith the info
 ----- Original Message -----
rom: "TsuguoKaneko" <
BXD06051@nifty.com>
o: "GianPaoloTrivulzio" <
gianpaolo.trivulzio@tin.it>
Sent: Friday, October 08, 2004 4:29 PM
Subject: TeachMePlease?

【はじめに】
 世界最古の速記「ティロの速記」では、どのような書字材料を使用したのでしょうか。
イタリアのジャン・パウロ・トリブルツィオさんに、聞いてみました。

Ø       Hello, Trivulzio san,
I have questions about the writing materials in the Old Roma era.
1) What stylus were made of ? bone, wood ,stone or iron , which Tiro used
his famous QPN ?
According to the general information and the few samples that we have in some museums, the stylus were mainly made of wood or stone. One part of the stylus was with a nib while on the other part it was rounded. This rounded part was used to 'cancel' the writings in the wax.

Ø      【スタイラスの形】

一般的な情報によると、幾つかの博物館に数個のサンプルがあり、スタイラスは主に木や石でつくられている。スタイラスの先端はとがっていて、反対側は丸くなっている。この丸い部分はろう(蝋)板に書いたものをキャンセルするために用いられる。

2)What wax plate was made of ? Size , depth of surface where melting wax flown

 The wax plates were mainly made with wood. The was was a frame which permitted the wax to stay inside and moreover to put one plate over another without rubbing the surfaces. To this effect there was also the possibility to cover the plate with another plate of wood, like a box.

 Several plates could be put together or side by side. They were joined with laces. I have a picture from a museum in Italy which has 'rebuilt' these tables and you can more easily understand

【蝋板の色はあったのでしょうか】
ろうには色がつけられていなかった。そのろう自体の色、それは明るい茶色みたい。

What color was wax ? compound of pigment colored black , red or some color ?
 The wax was not coloured, it had the original colour which is somewhat light brown

【初の試みで、紙の上にサインペンでQPNを書いてホームページに載せたんですよ】
私もほんとにあなたが初だと思う。
As first challenge , I have written QPN on the paper and sign pen and
uploaded on the Home page in Japanese. This is first demonstration by micro
video Tironian notes with motion, maybe ?

  I think you are really the first one! 

【できたら古代ローマの蝋板とスタイラスを復元したい。
それは速記者にとって、おもしろいことじゃないか】

もちろん、そういうたぐいのものを見るのはいつもおもしろい。
この簡単な道具がとってもたくさん使われてきて、私たちにものすごくたくさんの情報を
伝えることを許したことを知るというのはね。

If possible I hope to reproduce a wax plate and a stylus in old Roma. It
should be fun for stenographers in the world,isn't it ?

 Of course it is always interesting to see these things and to know that this simple tools have been of much use and have permitted to transfer us so many information.
 
【余談だが、ある先生と特定話者の音声認識による復演自動反訳システムを開発しようと考えている】Ø      【我々のCAVER、つまりコンピューター支援逐語リアルタイム反訳システムは完成して、訓練する段階に来た】
あなたと同意見だ。特に、あなたがたの言語と筆記にとって、私は大変有用だと思う。イタリアでは、我々は現在この技術が、学習期間がずっと短縮されるという理由で、普及しつつある。
> I and my friends will start challenge to develop a real-time voice

Ø      recognition system by one man narration now getting cooperation by Prof.. of certain university.
CAVER ,computer aided verbatim real-time transcribing system , has developed
 now and we plan to teach .
> One voice real-time repeating voice writing has many advantages than pen
 shorthand.
 I agree with you. Especially for your language and writing I thinks it is very useful.
In Italy we are now spreading this technology since it is more quick to be learnt.
> Thank you again !
> Tsuguo Kaneko
 
Thanks to you, if I found additional information I will keep you informed.
 I sincerely hope you will be in Wien with us, if this is not the case could you please send a written text explaining your application of speech recognition for Japanese?
 Best regards
 Gian Paolo Trivulzio
【下のurlをのぞくと、蝋板とスタイラスの写真がありました】

Dear Kaneko san
 Following my previous message, I have found on Internet a picture which is better than the one I have previously sent to youYou can see at at the page

http://images.google.it/imgres?imgurl=http://www.lore-and-saga.co.uk/assets/images/Roman_Writing_400w.jpg&imgrefurl=http://www.lore-and-saga.co.uk/html/roman_soldiers_equipment.html&h=290&w=400&sz=23&tbnid=X3vtDLev1TEJ:&tbnh=87&tbnw=120&start=7&prev=/images%3Fq%3Droman%2Bwriting%26hl%3Dit%26lr%3D

 Friendly regards
Gian Paolo Trivulzio

蝋板とスタイラス

たのしいゲーム

当時と同じ
蝋板とスタイラスを用意して
ティロの速記を再現してみました。
小谷征勝さんがティロになった感じで、
キケロの演説を書いているつもりで実演しました。
ワックスプレートにスタイラスで書きました。
朗読は加古修一さんでした。

    (UPしませんが、動画ももちろん収録しました。)

2004.10.26 
  兼子 次生

 

----- Original Message -----
From: "Gian Paolo Trivulzio" <gianpaolo.trivulzio@tin.it>
To: "TsuguoKaneko" <BXD06051@nifty.com>
Cc: "Carlo Rodriguez" <c.rodriguez@idi-formazione.it>; "Cees van Beurden"
<info@vbreporting.nl>; "Neubauer Boris" <neubauer@fh-aachen.de>; "Crippa
Corti Isa" <marialuisa.corti@fastwebnet.it>; "Ramondelli Fausto"
<f.ramondelli@senato.it>
Sent: Monday, October 11, 2004 1:00 PM
Subject: Re: URLofTironianNotesWriting

Thanks very much for the nice photos you have sent me. I have distributed toother friends.
I have seen the link you mentioned and the film is very good. Also the speaking of Quosque....
is correct and clear.
Best regards

Gian Paolo Trivulzio

----- Original Message -----
From: "TsuguoKaneko" <BXD06051@nifty.com>
To: "GianPaoloTrivulzio" <gianpaolo.trivulzio@tin.it>
Sent: Monday, October 11, 2004 1:19 AM
Subject: URLofTironianNotesWriting

Hello,Mr.Trivulzio san,
thank you very much for your kind advice. !
Mrs.Atsuko Kajiyama opened her Stenography room in her Homepage.
url is  http://www.asahi-net.or.jp/~cd3a-kjym/
and Index of the page is  Stenography ,where you can find Tironian Notes
writing by Mr.T.Kaneko .

Last Saturday , I went Kyoto Greek Roman Museum for the small meeting of
fashion. Where I could notice two figures holding stylus, as attached
photos.
It should be a stylus . Angel keeping stylus in her right hand .
Tsuguo Kaneko
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・「速記道楽」さんのpageには兼子次生さん提供の現代の日本語速記の動画がUPされました。
 「速記道楽」さんのURL is http://www12.ocn.ne.jp/~sokkidou/