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黒いLes Paul Customモデル
   1973年初頭のステージ写真では、財津和夫が黒いエレキギター「Les Paul Customモデル」  を使用している。「モデル」と言ったのは、その形状から明らかに米Gibson社のオリジナ  ルではないからである。ボディ表面は平坦であり、Les Paul特有のなめらかな隆起状の加  工(アーチドトップ)が成されていない。また、ネックがボディとネジ留め(ディタッチャ  ブル・ネックと言う)されてる点で、これが安価な国産コピーモデルであることが分かる。  写真ではヘッドのロゴマークが判別できないが、形状から判断すると「Fresher」という  国産ブランドのものではないかと思われる。  1973年夏から1974年にかけてのLIVE写真では、財津はFender Telecaster Customを使用  しているので、このコピーモデルの使用はごく短い期間であったと思われる。  1975年春頃に撮影されたステージ写真で、なぜか上田がこのギターを弾いているものがあ  る。リハーサルでの遊びなのか、本番でも上田が演奏していたかは判断できないが、本番  においてもこのギターがステージ上に置かれていたことが確認できる。
Rickenbacker 4005
 ●外観写真  米Rickenbacker社のエレクトリック・ベース。1966年から1984年まで製造された。  Paul McCartneyが使用していた4001ベースは単板のソリッド型だが、4005は中空のセミ  ソリッド型で表板の角がラウンド加工になっている。  THE WHOのJOHN ENTWISLEが一時期使用していたが、それ以外に高名なミュージシャンが  使用していたのは見たことが無い。少なくとも日本のプロ奏者でこのベースを使ってたの  は吉田くらいではないだろうか?  吉田がこのベースを使用していたのは1972年後半から1974年まで。当時約30万で購入し  たとのこと。雑誌のインタビューで「ボディが大きくて弾きづらかった」と語っており、  1975年から1979年末の脱退までFender Precsion Bassがメインとなる。以降、サブと  してツアーに持ち歩いており、1976年のツアー時に楽屋で吉田がこのベースを弾いてい  る写真を確認できる。
Fender Telecaster Custom
 ●外観写真  米Fender社のエレクトリック・ギター。1973年夏から1975年にRickenbacker 331に持ち  替えるまで、財津和夫がステージで愛用していた。以降はメンバー共有のサブ・ギターと  してステージ脇に設置されることが多かった。1979年のツアーパンフレットでは、安部が  ステージで使用していた写真が確認できる。  Telecaster CustomはTelecaster初のバリエーションモデルであり、製造は1959年から。  サンバースト塗装で、ボディ表/裏の周囲に「セル・バインディング」と呼ばれる合成樹  脂製の縁取り装飾が施されているのが特徴。以下の点から、財津が使用していたのは1967  年から1969年の間に製作されたものと推測する。  (1)指板がメイプル(白木のカエデ材)である。      1959年から1966年まではローズウッド(黒木)指板のみ。1967年からはメイプル      指板もオプションで選べるようになっていた。  (2)ヘッドのロゴが「モダーン型」である。      製造年度によってFender社のロゴマークが少しづつ異なる。財津のギターのロゴ      はモダーン型と呼ばれる角張った黒い文字で、1967年頃から使用されている。  (3)フロントピックアップがシングルコイル型である。      1970年からはフロントピックアップがハムバッキング型に変更になっている。
上下に2段積み
 ●イメージ図  季刊ポッポNo.12に掲載されているステージ写真では、安部と財津のFender Twin Reverb  アンプが2段積みされている。よく見ると上下でタイプが異なっており、上に積まれた方  には「マスターボリューム」というアンプ単体で歪みを作り出すツマミが付いていない。  また、上に積まれた方は電源ONを示すパイロットランプが点灯しているが、前面の入力ジ  ャックにはシールド線が接続されていない。  安部/財津は、この2台のアンプをどのように使用していたのであろうか?  私が想像するに、上のアンプを「拡張スピーカーボックス」として使用していたのではな  いかということだ。  Fender Twin Reverbには背面パネルに「EX Speaker Jack」という端子があり、アンプ部  から内蔵スピーカーに出力する信号をこの端子からパラ出力することが可能である。  また「Speaker Jack」という端子に外部入力をINPUTすると、内蔵アンプを通さずに直接  スピーカーで鳴らすことが可能である。  つまり、下のアンプのEX Speaker Jackからの出力を上のアンプのSpeaker Jackに入力す  ることにより、上下のスピーカーから同じ音が出力されることになるのである。  これを行うことのメリットは「聴覚上2倍近い音量になる」ことである。当時はまだギタ  ーアンプの音をマイクで拾ってPAで拡声することはやっていないため、「音色は変えずに  ギターの音量だけを増幅させる」ための工夫と思われる。