Tulip Reference Data


● Gibson Les Paul Special 3/4 Scale ●

シンコーミュージック刊「季刊ポッポNo.5 <<特集>>チューリップ/夏色のおもいで」より
 姫野が1973年夏頃に使用していた、米Gibson社製のエレクトリック・ギター。
 ムック本「TULIP '77」等には安部の所有ギターとして紹介されており、姫野が安部
 に譲ったのか、安部がこの時期のみ姫野に貸していたか不明である。
 また、72年4月29日の日比谷野音ステージで、安部がこのギターを使用している姿も
 確認できる。

 チューリップ関係の資料では「Les Paul Junior」と記載されているが、外見の特徴
 から判断すると「Les Paul Special」と呼ぶのが適当と思われる。
 以下にその理由を記す。
左からJunior(Single Cutaway)/Junior(Double Cutaway)/Special(Single Cutaway)/Special(Double Cutawy)
 Les Paul JuniorはP90というシングル・コイルのピックアップをひとつ搭載したソリ
 ッド・ギターである。Les Paulと同じくボディの右肩だけがカットされた「シングル
 ・カッタウェイ」型と、両肩がカットされた「ダブル・カッタウェイ」型の2タイプ
 がある。カラーはチェリーレッド/サンバースト/ライムイエロー。ライムイエロー
 でダブル・カッタウェイのタイプのみ「TVモデル」と呼ばれている。これは当時の
 モノクロテレビにおいて、この色が非常に映えて見えるということからのネーミング。

 一方、ピックアップが2つ搭載されたモデルはLes Paul Specialという別のモデル名
 が付けられている。Specialも「シングル/ダブル」の両カッタウェイモデルがある。
 Juniorとの細かな差異としては、ピックガードが白黒の2プライになっている点と、
 P90ピックアップの両端にボディ取り付け用の三角部分が無い点等がある。(当然2
 ピックアップなので、ピックアップセレクターとコントロールノブが追加されてる)

 ちなみに「Les Paul」というのはアメリカの高名なギタリストの名前。Gibson社が初
 のソリッド型エレキギターを開発するに際し、Les Paul氏のアイディアを取り入れて
 1952年に発売したのがLes Paul Standardモデルである。Gibson社はStandard以外に
 Custom/Junior/Special等のバリエーションモデルを発売したが、Les Paul氏が実際
 に製造に関与したのはStandardのみである。

・1954年:Junior/Special、シングルカッタウェイ型製造開始
・1958年:Junior/Special、ダブルカッタウェイ型にモデルチェンジ
・1961年:SGシェイプ(尖った両肩+コンター加工)にモデルチェンジ 
・1963年:モデル名がSG Junior/Specialに変更
 姫野が使用していたギターは耳無し2ピックアップで白黒ピックガードであることか  ら、上記のルールに従うと「Les Paul Special」と呼ぶのが適当と思われる。  また、ダブルカッタウェイでコンター加工が無いことから、製造年は1958年から1961  年までの間ということになる。  また、通常のJunior/Specialがフルスケールであるのに対し、姫野のギターは3/4の  ショートスケールであるのが特筆すべき点である。Gibson社のショートスケールモデ  ルと言えば「Melody Maker」があるが、Junior/Specialでショートスケールという  のは非常にレアである。