"Tales of Matsumoto 2"
Symbol-5 : In The Light
「今までの経緯を整理してみましょう」柴田が全員の顔を見回して言った。
「まず、夕食の準備中にエリックさんがいなくなりました。これが最初の事件です。
そして夕食後に、近江さん/佐々木さん/小見山さんの3人がいなくなりました。
最後に、尾藤さん/田口さんの2人がいなくなりました。
....これらの共通点は何でしょう?」
「.....居間、かな?」
長い沈黙の後、Yas師がポツリと言った。
「なるほど!全員、居間にいて、行方不明になってるんですね」本多が目を輝かせた。
「でも、最後の2人は?彼らは居間から消えたとは限らないですよね?」鈴木が反論する。
「馬鹿ね、ズッキー!この鮮血が目に入らないの?
この居間にいた時に、2人に何かあったに違いないじゃない?」中村嬢が鈴木をたしなめた。
「う〜ん.....でも、我々も夕食の時はずっと居間にいましたよ。
消えてしまった彼らと我々とでは、何か決定的に違う要素があったハズです」柴田が言った。
「でも、鍵はこの居間にあるハズだ。何か変わった形跡がないか、手分けして捜してみよう!」
勇ましく号令をかける青柳であったが、腰が抜けて立ち上がれないのが無様である。
「みんな、これを見て!」
Yas師が例のビデオテープの存在に気付いたのは、居間を捜索して間もなくのことであった。
「これ、沼田さんが送って来た例のビデオテープなんだけど、デッキの中に入ってたんだ!」
「誰か、このテープをデッキに入れた人はいますか?」柴田の言葉に、全員が首を横に振った。
「ということは、行方不明になった6人のうち、誰かが入れたということになりますね」
「後で上映会をやるって言ったのに、我慢できない人達なんだから....」鈴木が文句を言う。
「Yasさん、そのテープはどこに置いてたんですか?」柴田が尋ねる。
「確か....デッキを入れていた手提げバックの中に入れてあったと思う」
「....デッキをバックから出してセットアップしたのは、たしかエリックさんでしたね」。柴田
が言葉を続ける。
「つまり、最初にこのテープを『見た』のはエリックだという事?」本多が言った。
「それはもう、間違いないね。俺もうかつだったけど、たぶんエリックはバックの中のテープに
気付いたと思う。あいつのことだから、何のためらいもなく中身を見たと思うよ」
Yas師の言葉に、全員が深くうなづいた。
「ひょっとして、さっきの柴田さんの疑問にあった共通点って、これじゃないの?」
中村嬢が唐突に言い出した。
「これって?」床に正座したままの青柳が尋ねる。
「行方不明になっちゃったのは、このお宝ビデオテープを見た人達ってこと」
「それは、ちょっと飛躍してませんか?エリックさん以外の人が見たって確証はありませんよ」
すかさず鈴木が反論した。
「でも、他に娯楽もないこの居間にいて、飲む以外にやることと言ったらビデオを見ること
くらいでしょ?デッキに何かテープが入っていたら、とりあえず見るんじゃないかしら?」
「とにかく」柴田が言う。「今回の事件には、このビデオテープが何らかの形で絡んでいる
可能性は少なくない、と思われます。色々推測する前に、まずは中身を見てみませんか?」
Yas師はテレビの電源を入れ、ビデオテープをデッキに入れてリモコンの再生ボタンを押した。
数秒のテープローディング時間の後、画面はビデオ再生映像に切り替わった....。
「....砂嵐ばっかり?何も録画されていない?」
続劇
松本物語II 第6話に続く