Euro Tour 傾向分析

さて、レビューから分析した内容を以下に列記します。
1.Whole Lotta Loveのアレンジ推移  Euroのsetlistで最も興味深いのは、WLLのアレンジの移り変わりでしょう。  この曲はUS 1st-Legでは4/29/95 Chicago 2nd Nightでのみ演奏されたレア曲でした  が、Euroツアーでは全26公演中21公演で演奏されました。  ●導入経緯    Milanでの最初のフェスティバル出演にあたり、彼らはsetlistを約40分短縮する    必要がありました。そのために行ったのは以下のことでした。     ・導入tapeを使用しない。     ・Ramble Onをsetlistから落とす。     ・Shake My Tree/Lullabyをsetlistから落とす。     ・Hurdy Gurdy Solo後の曲(When The Levee BreaksかNobody's Fault But      Mine)をsetlistから落とす。     ・アンコールを基本的にしない    これらの処置により演奏時間はコンパクトになりましたが、大きな見せ場が失わ    れることになりました。それは...「テルミン・ソロ」です。    フェスティバルという不特定多数の音楽ファンが集まる場所で、パフォーマンス    効果の高いテルミン・ソロを省くのは、どう考えても得策ではないでしょう。    『テルミン・ソロを披露できて、フェスティバルでの短い演奏時間で観客に強烈    にアピールできる曲』..."Whole Lotta Love"がsetlistに加わったのはごく自然    ななりゆきと言えましょう。この曲を加えるために、Luneberg以降ではBlack Dog    がフェスティバル用のsetlistから落とされています。  ●演奏パターン    この曲の演奏には、大別して以下の4パターンがありました。    (メドレーで演奏されたLyonを除く)    A)ネブワースVersion + Thermin Solo      1979年のネブワース公演で演奏された、中間部に変則リズムのリフパート      が挿入されるパターンに、Thermin Soloを新たに加えたものです。      レビューではネブワースVersionと略記しています。    B)Atrantic Version + Thermin Solo      1988年のAtlantic Record40周年記念コンサートで演奏された、変則リズ      ムのIntroで中間部にネブワースパートが挿入されるパターンに、Thermin      Soloを新たに加えたものです。      レビューではAtlantic Versionと略記しています。    C)Atlantic + Jam Version      B)のThermin Solo後に、Calling To You中盤のいわゆる"Jam"パートを追加      したものです。    D)Atlantic + Jam + Medley Version      C)のJamパート後に、Calling To Youのメドレーパートを追加したものです。
WLL 演奏パターン一覧表(M:メドレー)
JUNEJULY
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   一旦はDのパターンで完成を見たかと思わせますが、Aに戻り、最終的にはCの
   パターンでツアーを終えているのが面白いところです。
   個人的には、『Dのパターン』が最も洗練されていて良い構成だと思います。


2.The Wanton Songでのイントロ・バスドラの変化  US 1st-Legの後半あたりからDrumsのMichael Leeの手数が多くなってきましたが、Euro  ではその傾向が更に顕著になりました。その象徴とも言えるのが、このThe Wanton Song  でのバスドラ・パターンの変化です。  Wantonイントロの5小節目からのスネアとのコンビネーションがドタドタ入り、7小節目  ではバスドラのシンコペーションが一発入ります。この何気ない一発が実にカッコ良い!  この変化は7/12/95 Glasgow公演から始まり、以降の公演は全てこのパターンの延長です。  勝手なドラム譜で表現すると、以下のようになります。  縦棒が1小節を16分割した区切りと考えて下さい。   | | | |  | | | |  | | | |  | | | |    H | | |  H | | |  H | | |  H | | | <--Hi Hat   | | | |  S | | |  | | | |  S | | | <--Snare   B | | |  | | | |  | | B |  | B | | <--Bass Drums   | | | |  | | | |  | | | |  | | | |
3.最高/最低の演奏だった公演は?  演奏点での最高が5つ星で3公演、最低は2つ星で3公演ありました。  ●最高:7/15/95 Cornwall, 7/20/95 Dublin, 7/22/95 Birmingham  ●最低:6/24/95 Schwalmstadt, 6/29/95 Denmark, 7/02/95 Munich  最低の公演も演奏ミスはほとんどなく、全体的にはグレードが高かったと思います。  その分、突出した公演がなかったのも事実ですが....。  Euroの中でひとつベスト公演を、と言われたら、私は7/22/95 Birmingham 1st nightを  推します。これはsetlistの構成が良く、バランスの良い演奏であったためです。  (他の2つは変則setlistであった)
4.まとめ  P&Pのワールドツアーがアナウンスされた当初は、春にUS、夏にEuro、年末あたりに  日本その他(インド?)の国を回るという話でした。  しかし、実際はUS 1st-Legの成功を受け、秋/冬にかけてUS 2nd-Legが挿入される  ことになり、Euro Tourはその間に挟まれる形となりました。  USはもちろん世界一のビッグ・マーケットであり、1st-Legと同じ公演地が含まれて  いるという事情もあったため、Euro Tourでは『US 2nd-Legを見越したsetlist変更』  を意識せざるを得ない状況があったと思われます。  結果だけ見ると『非ZEPP曲を落としてZEPP曲のオンパレードとなった』と思われがち  ですが、ひねくれ者の彼らはひと味違っていました。  新登場のThe Battle of Evermoreは"Unleded"のハイライトであり、女性Vocal&エジ  プシャンを全面にフューチャーした、ZEPP時代とは全く『別物』のVersionでした。  また、Going To CaliforniaはZEPP時代には不可能であった生ストリングスをフュー  チャーした壮大な曲となっています。つまり『ZEPP曲をZEPP時代とは別のアプローチ  で演奏する』ことに、まだまだ2人がこだわっていた点に注目すべきです。  とは言いながら、『多くの観衆はZEPPの面影を求めて会場に来ている』のは紛れも  ない事実でしょう。  観客の要求と自分達のプライドを、どうバランスを取っていくか?    Euro Tourは、演奏面での重要な過渡期であったと思います。  彼らはWembleyでの熱狂を後にし、MexicoでのWarm-Upを行った後にUS 2nd-Legに  突入します。彼らは、そこで答を見いだせたのでしょうか?  次回『US 2nd-Leg編』をお楽しみに!