US 1st-Leg Tour 傾向分析

 レビューを元に、ツアーの傾向を分析してみましょう。

1.選曲の傾向

1st-Legでフルパート演奏された曲は全部で28曲ありました。 ZEPP曲,"No Quarter"からの新曲の他、Jimmy/RobertそれぞれのSolo曲とサポートの Porl Thompsonに敬意を表して(?)The Cureの曲が各1曲ずつ盛り込まれていました。 特にカバーデイル・ペイジのShake My Treeは、まるで最初からRobertとの合作曲であっ たような違和感の無さであり、噂される次回作への期待を抱かせてくれる1曲でした。 ZEPP曲に関して言えば、全てのオリジナルアルバムから漏れなく選曲されていました。 "III"からの演奏曲が多いのは、UnLededがそもそも「アンプラグド」企画だった訳で、 アコースティック色の強いこのアルバムの曲が一番マッチしたからでしょうか? ただ、ZEPP曲はHey Hey What Can I Do以外は全てステージで演奏したことのある曲で あり、意外と手堅い選曲であったと言えましょう。 一般誌の記事等を読むと「だんだんと客に迎合して、ZEPP曲オンリーになっていった」 ようなニュアンスで書かれていますが、私はちょっと違う見方です。 ツアーが進むにつれ他のZEPP曲も演りたくなり、その分Solo曲を落とさざるを得なかった だけではないかと...。事実YallahやWonderful Oneは1st-Leg以降も度々復活してますし、 メドレーでは相変わらずマニアなカバーをやったりしてます。 日本公演でもしっかり演奏してるのに、ライター諸氏は何であんな言い方をするのか不思 議です。一部の公演のsetlistしか見てないのでしょうか?

2.演奏の傾向

楽曲のアレンジは、アルバム"No Quarter"で披露した曲以外はほぼオリジナルに忠実でした。 特にThe Song Remains The Sameでは、ツインギターでスタジオバージョンを再現していました。 この曲では2回Soloパートがありますが、最初のパートをPorlが担当したことでJimmyファンは かなり激怒していたようです。JimmyのSoloは、タラリタラリという例の3連ピッキングが当初 4小節だけでしたが、4/1のAurburn Hills 2nd Nightからは8小節にレベルアップ(?)してます。 また、DrumsのMichaelがツアーの進行に伴い手数を増やして行ったことが特筆されます。これに より、当初は単調だったリズムがドライブするようになり、Jimmy/Robertもそれに引きづられる ように良い演奏をするようになっていきました。 各曲の演奏は基本的に固定でしたが、中盤のSince I've Been Loving YouではJimmyが毎回アド リブプレイを披露しています。ここでJimmyが冴えたフレーズを出すと、Robertもそれに答えて パワフルなシャウトで絡んでいく、というのが最大の聴き所でした。 ステージ終盤はオケ隊との怒濤の合奏になりますが、個人的には
In The Evening,Kashmirは、ZEPP時代よりPage/Plantの方が良い!
とあえて断言します。 ZEPPのステージではMellotronやYamaha GX01を使ってオケをシュミレートしていましたが、貧弱 な音もさることながらJonesyのプレイは『味』を通り越してたどたどしい演奏の日がかなりあり ましたから...。重厚なオケ/Bandをバックにし、Robert/Jimmyは伸び伸びと気持ち良さそうに 演奏してます。

3.各公演の出来の傾向

こうして全公演を続けて聴くと、想像していた以上に波があることがわかりました。 Robertは声がひっくリ返ったり枯れてたりする場合がありましたが、73年当時のような悲惨さは なく、なんとか歌いこなしてしまうところはプロとしての年季を感じました。(たぶんLIVE後は バカ騒ぎしないで寝てたんでしょうね〜) Jimmyは、当初は手探りの演奏っていう感じでしたが、ツアーが進むに従って冴えたフレーズをポ ンポンと出すようになり、ツアー終盤のSIBLYなぞは『こ、こりゃ〜凄い!』という早弾き流麗プ レイを何度か見せつけてくれました。 やっぱり、この人は弾けるんですよ。80年以降の演奏がひどかったのは単に練習不足だっただけ で、今回のツアーで完全にリハビリできたんだと思います。カバペーでステージ勘も取り戻して たし。 で、前章の演奏点から見ると、傾向は以下のようなことになります。 ●3月20日頃に一度ピークを迎え、ゆるやかに出来は悪くなり、4月の最初にはどん底になる。 ●その後は上向きになり、約2週間のOFF後の4月後半から5月最初にかけてピークを迎える。 ●終盤はLA前後でちょっと落ち、上向きの状態でツアーを終了する。 そう言えば、ZEPP時代もツアー後半の真ん中あたりが調子良かったりしてましたね。 相変わらずスロー・スターターなお二人でした。

4.最高の公演/最低の公演は?

演奏点から判断すると、5つ星が最高、ひとつ星が最低ということになります。 じゃー、どれかって言うと... ●5つ星   4/25/95 Cincinnati, 5/1/95 Milwaukeeの2公演でした。   トレーダーのYasさんはMinneapolis/Tacomaを推されていましたが、この時期の公演の出来   は紙一重ですから〜。あと、Chicagoあたりも悪くないですね。   LAは良い演奏だとずっと思っていましたが、これらの公演に比べると聴き劣りしました。 ●1つ星   2/28/95 Atlanta, 3/10/95 New Orleans, 4/4/96 Philadelphiaの3公演でした。   不幸にもこれらの音源しか聴いていない方! それはPage/Plantのかりそめの姿なんです   から(笑) ただちに西新宿に走るべし、です。 偶然ですが、5つ星がついた公演は両方ともブート未リリースですね。 音の良いDAT物が出回っていますので、ブート屋さんの健闘を期待します。

5.まとめ

1st-Legの基本的な構成は3公演目のAtlanta 2nd-Nightでほぼ確立されましたが、曲順の一部 は頻繁に差し替えを行っており、絶えず良いステージにしようとする努力が見られました。 また、各曲の演奏においても試行錯誤がなされており、当初は稚拙だった曲が後半には自信に満 ちたものに進化していきました。 往年のZEPPファンの中には彼らの演奏に関して批判的な見方をされている方が多々いるでしょう が、そういう方はPage/PlantとZEPPを同一視しようとする気持ちがどこかで働いているのでは ないでしょうか? 彼らはこのプロジェクトの開始にあたり、『Led Zeppelinの復活ではない』ということを繰り返 し強調していました。『二人で一緒に組んで音楽をやってみたい』というのが骨子であり、その 結果、マテリアルが新曲やSolo曲だったり、ZEPP曲であったりしただけの話です。 ここのところを理解していないと、 ・ZEPPの中心メンバーがZEPPナンバーを演奏しているんだからZEPPの再結成に他ならない。 ・だけど、BonzoもJoneseyもいないし、あの独特のグルーブ感(?)もない。 ・やっぱりあれはZEPPであってZEPPでない! などというロジックの狭間に陥り、演奏に拒絶反応を示してしまうでしょう。 いろいろな考え方があって当然ですが、私は 「ZEPPとは4人のミュージシャンがある時期に引き起こした『現象』であり、Bonzoの死 とともに自然消滅したもの」と考えています。 だから、ZEPPの再結成などということは物理的に不可能だし、考えること自体ナンセンスだと 思っています。 そういう観点から1st-Legを見れば、ベテランミュージシャンによる珠玉の名作のオンパレード という、誠に贅沢なパフォーマンスであったと言えるでしょう。 さらにRobertやJimmyが各々のSoloプロジェクトでは発揮することのできなかった「凄み」のよ うなものが、演奏を重ねるにつれて形成されていったように思えます。 近年、欧米の音楽シーンは深刻な不況に陥っており、かなりのビックネームでもツアーの縮小や 中止を余儀なくされている状況です。Pink FloydやRolling Stonesはスタジアムツアーを大々 的に行っていましたが、これがギルモア・バンドやミック&キース・バンドであったらどうだっ たでしょうか? そんな中で、彼らは"Led Zeppelin"という金看板をあえて打ち出さずにツアーに臨みました。 当然プレッシャーはあったでしょう。客の動員が悪ければ、あっさりツアー打ち切りといった危 険もあったと思います。 しかし、蓋を開けてみると47公演ほぼ良好な動員であり、秋には2度目のUS公演を開催でき たことを考えると、興行的にも大成功であったと言えましょう。 1st-Legの成功こそが、日本公演を含むワールドツアーの実現に至る貴重な足掛かりだったので す。 彼らはこの余韻を残して、夏のEuroツアーに突入していきます。各地の音楽フェスティバルへの ゲスト出演、75年以来の二人そろってのLondon公演等、見所一杯です。 次回のEuroツアー編では、更なる飛翔を遂げる二人の活動にスポットをあてたいと思います。