香港攀岩  東龍島(Tung Lung Chau) &ビーコンヒル(Beacon Hill) &セントラルクラッグス(Central Crags)
2011.11.30-12.05
 今年は機会がないと諦めていた海外でのクライミングが、11月末から休みが少しとれたので、急遽行けることとなり、いろいろと調べる時間もないので、取り敢えず、今回は以前からいつでも行けると考えていた香港に行くことにしました。いつものように観光を兼ねたクライミングツアーですが、天候に恵まれ、林立する摩天楼や青い海を眺めながら、思う存分クライミングを堪能してきました。
 妻は40年ぶりの香港で、東洋の魔窟「九龍城塞」もなくなってしまった近代的な街並みに驚いていましたが、急速に経済成長を遂げる中国の姿の中に、昔ながらの庶民の生活も感じながらの楽しい旅行ができました。以下、今回周った香港の代表的なクライミングエリア3か所を簡単に紹介します。

 前日、成田より香港に入国。エアーバスで市街地に入り、MTR佐敦駅近くのホテル「ラルゴス」に入る。
2日目は、早速東龍島へクライミングに出かける。島へのフェリーは西湾河駅から5分程歩いた港の岸壁から出航する。到着したのが少し早く、案内も船も何もなく不安になったが、時間には港の中に停泊していたそれらしき船がやって来て無事出発。平日のため乗船客は少ない。
(写真は4日目に島に再度渡った時の、西湾河港岸壁に接岸したフェリーと後方の高層住宅。)   

 両岸の九龍、香港島の景色を楽しみながら、約35分ほどで島の桟橋に到着。岩場へは、この船着き場の小さな村から左へコンクリートの歩道を登っていく。ブーゲンビリアの花が咲いてとてもきれいだ。
(写真は4日目に行った時のもので、三家村から先に来ていたフェリーが戻っていくところ。山のスカイライン中腹にカイトロックが見える。)

 途中から展望が開け、やがて道は下りになり暫く行くと、クライマー御用達らしい「SOUTH GARDEN STORE」という、気さくなオジさんのいる食堂に到着する。ここはエリアから10分程の距離なので、ちょっと食事をしに来ることも可能であり、荷物を置かせてくれるなどクライマーに便宜を図ってくれるようだ。私達は帰りにお腹が空いていたので、ワンタン麺を食べて帰ったが、麺はインスタントなので期待はしない方が良い。この店の間を通りキャンプ場までは5分程である。

 キャンプ場から岩場を下り、左にテラスを回り込むと、テクニカル・ウォールに到着。この日は風があり、波飛沫が時々テラスまで飛んでくるがクライミングにはさほど影響なく、易しいラインを3本ほど登った後、The Corner(F 6C+)(写真)をトライし1回目でクリアー。(動画を見ていたので、フラッシュか)
(写真 コーナーの右がDimple Face。左のシンクラックを行くのがTung Lung Bad Boy。)

 次に、Purple Heart(F 7a)(写真)をトライする。ガバなのに持久力なく最上部でテンション入り、なんとか3回目にRP。香港の岩場は一般に1本目のプロテクションが遠いがプリクリップはしないようだ。ムーヴは易しいので慎重に行けば問題はないが、ビレイヤーはもしもの時のため確実なバックアップに心掛けたい。
この日は平日のこともあり、他にクライマーはおらず貸し切り状態でクライミングを堪能する。
(写真 Purple Heartの核心上。右のフェイスからハングを右に出て行くのがBig Hand。)   

 この日は、インストラクターの指導のもと、中学生(インターナショナルスクール?)のアウトドアー教室が催されており、クライミングやロープ渡りなどの体験をしており、日本にはないカリキュラムがあることにちょっと驚く。日本では何かあった時の責任が問われるので、教育委員会が絶対に許可しないでしょうね。
(写真 洞穴のある入り江に張られたロープを渡っていく生徒)

 平日木曜はフェリーが往復1便のみのため、テクニカル・ウォールのクライミングをゆとりを持って少し早めにを終え往路を戻る。
 写真は生徒たちが泊っているテントの並ぶキャンプ場。後方は島の山頂方向で、小さな松林から左に登ったところに、4日目に行ったシー・ガリーの頭が少し見える。

 3日目は九龍地区北方にあるビーコン・ヒルへ。船ではないので出発時間は気にする必要はなかったが、帰路に「黄大仙」に行く予定を入れたので早めにホテルを出る。MTR石硤尾駅を出て、駅前でタクシーを拾い、龍欣道途中の水道施設のある休憩所前まで行く。車はこの先で進入禁止となっている。岩場へは右の階段を金網に沿って、途中フィックスを辿って登っていくと、15分ほどで到着する。

 易しいフェイスやスラブを何本か登る。岩は南面で明るく、天気は良いが風があって爽やかで、季節的に乾燥しているので不快感は全くない。前日の東龍島で指先を酷使したためテーピングをするが、結晶が粗いので、それでも指先に痛みが走る。写真はAngels Wing(F 6b+)で、右のクラックから右は限定だが不自然さはなく面白いライン。右のコーナー部分はSpitting Cobraでこのラインも面白い。

 今回登ろうと思っていた、Lizard(F 7a)。1回目は上部クラックの入口で、ムーヴに迷いテンションが入る。ムーヴを固めて2回目にRP。思っていたように素直なライン取りで面白いライン。次に、直ぐ左のPeace Foreverをやるが、上部のムーヴが良く解らずフォール。何回かトライしてムーヴを解決するが、指先が限界で今回は1回のみのトライで終わる。上部が核心だが2-3手が非常に細かい。これら2本のラインの周辺は前傾しており、難しいラインが並んでいるので上級者も楽しめる。

 帰路は、タクシーを降りた場所の休憩所からコンクリートの階段を下り、高速道路沿いの広い道(車進入禁止)に出て暫く行くと、高層住宅街のバス停に着く。その後、石硤尾駅までバスで戻り、MTRで「黄大仙」までお参りに行く。
 (写真 下山途中に見える、ライオン・ロック=獅子山と九龍山)

 4日目は、再度東龍島へ。この日は、テクニカル・ウォールがおそらく混雑すると予想してシー・ガリーで登る。思っていた通り、というより、他にクライマーが来ないのに驚いたが、マイペースで登れたことはラッキーであった。
 写真は、対岸から見たシー・ガリー北面全景。右上から下って来て最初の壁がエントランス・ウォール。その左にテラス上の岩場、バンド状テラスの下にテラス下の岩場、さらにずっと左下の日陰になっているスラブがセントラル・スラブ。

 このエリアで人気の(らしい)Echo of Dog(F 6C+)を登る。少し細かなフェイスからガバが続き、最後は豪快にハングを越えるのだが、見た目ほどの難しさはなく、非常に快適で気持ちの良いラインである。

 シー・ガリーでは。最後に、Roasted Pig(F 6b)を登る。ボルトラインで、コーナーのクラックをステミングで快適に登って行くのだが、上部でオフ・ウィズスになり、クラック登りのテクニックが必要となる。 
 

 シー・ガリーでのクライミング後、2日目に登れなかったラインを登るため、テクニカル・ウォールに移動する。思った通り、岩場は満員御礼とまではいかないが、人気ラインは順番待ちのようで、割り込んで登るには気が引けてしまう。欧米系(香港在住と思われるが)のクライマーが多く、中国系と半々ぐらいで国際色豊かである。
 写真は、The Cornerから右の部分で岩の前が大きな岩畳の大テラスになっている。

 写真は、スモール・ルーフ辺りから左の部分で、この程度のクライマーが集まると思うようにルートには取りつけず、人気のないラインで、面白そうなものをトライするしかない。結局、空いていたBrack Ling(F 6c+)を登り、後は初心者が練習で登ると思われる傾斜のないフェイスを登って、帰りの船が4時にしてあったので、早めに引き上げる。
 帰路、船着き場の村の食堂で、この島で養蜂して作った蜂蜜が有名だとのことで、蜂蜜レモンを味わって帰途に就く。

  5日目は、香港のクライミングシーンでよく写真が紹介されているセントラル・クラッグスに行く。ビーコン・ヒルで会ったクライマーに聞いた通り、MTR金鐘駅からタクシーでダイナスティ・コートまで行き、オールド・ピーク・ロードを2分程登ったところの休憩所から右に水平道に入る。道は次第に山道となり、途中のフィックスに導かれていくと、ソーホー・クラッグの取りつき付近に出る。岩は部分的にはハングしているものの、全体的には垂直からスラブの感じである。岩場の感じは湯河原幕岩のようなイメージである。
 写真は、ソーホー・クラッグのPeel Street(F 6b)。カチカチのフェイスで快適だ。ここは取りつき周辺が狭く、セルフを取ってビレイをしなければならないラインも多い。日曜日でありながら、クライマーが少ないのは、何となく頷ける。

 金融シティ香港のビル群。岩場からもセントラルのビル群からビクトリア・ハーバーが見渡せる。岩場の快適度は今一つだが、この景色を見られるだけでも来た甲斐があるというものだ。遠く九龍後方のビーコン・ヒル、ライオン・ロック、遠く東龍島まで見渡せ、ここで登るのは晴れている日に限る。
 クライミング後オールド・ピーク・ロードまで戻り、そのまま徒歩で下って動植物公園で一休み。さらにセント・ジョージ教会を通ってセントラル駅まで摩天楼を見上げながら下っていく。高台の高層住宅からセントラル駅付近は、対岸の九龍地区と雰囲気が大分違い、セントラルは一部の金持ち、そして九龍は庶民の街という感じである。

 MTR佐敦駅近くにある男人街(Temple Street)。ここは旺角の女人街と並び、商魂逞しい中国人が観光客相手に商売するナイト・マーケットで有名である。近くには翡翠を中心に扱うジェイド・マーケットもある。翡翠は見る目がないと高いものには手が出せないが、夜市(ナイト・マーケット)では、値段交渉をしながら面白いものを見つけて歩くのも楽しいかもしれない。

  夜市近くの食堂街では、中華料理を中心に世界中の料理が楽しめる。毎日食堂街で朝夕と食事をしていたが、中華といっても微妙に日本と味が違うので、味の合う人と合わない人が人がいるのは仕方がない。この日に食べたタイ料理(写真)は、ものすごい辛さであったが、冷たいビールを一緒に飲みながら食べると最高に美味しかった。

 香港の夜の観光スポットは何と言ってもビクトリア・ハーバーを挟むビル群の夜景である。ビクトリア・ピークまで行く時間的余裕はなかったので、MTR尖沙咀駅を出て、ペニンシュラホテルのイルミネーションを見ながらアベニュー・オブ・スターズ方面に出ると、素晴らしい夜景が広がる。
 このツアーの期間中、街中にホームレスを見ることは殆どなかった。それは当局の働きかけもあるのだろうが、貧しい者から、不法移民、犯罪者まで、かつての無法地帯「九龍城塞」と同じように、全てのものを飲み込んでしまうところに香港の魅力があるのかもしれない。この輝きの裏には、必ず輝きを際立たせる深い闇があるのは確かなことである。
最後の夜、ネイザン通りのクリスマス・イルミネーションを楽しみながら、歩いてホテルに戻る。

 帰国日、チェック・アウトまで時間があったので、無事クライミングを終えられたことを感謝して、天后廟へお参り。天后は漁民の守り神で、昔はこの辺まで海であったらしい。お参りの仕方は、いろいろな神様の前に順番に線香を3本ずつ立て、お札を持って何回か礼をし、最後にそのお札を焼却するのだが、混んでなければ、線香とお札売りのオジさんが説明をしてくれる。
 香港は現在中国の一部であり、アヘン戦争、日本軍の占領、そして戦後の英国の再支配から、1997年に中国に返還され、1国2制度という政治経済体制の中で発展を続けている。語られている一部の歴史の真偽はともかく、香港を訪れる時には、中国全体の歴史を少なからず意識しながら、人や文化に触れる必要があるのではないだろうか。