さらば、温泉生活よ |
山梨から千葉へ戻り、半年が経とうとしている。やはり生まれ育った土地の、空気、匂い、そういったものは体が覚えているらしく、懐かしさと安堵の心持を与えてくれる。しかし、それだけでは物足りない。10年暮らした山梨での生活において根付いた「温泉」という名の習慣。千葉(松戸)の生活にはこれがないのである。 山梨には温泉が数多く沸いている。そのためいたるところに温泉があり、銭湯よろしく温泉へと気軽に行くことができる。なんといっても銭湯なみの値段というのがうれしい。週末、仕事帰りに寄る温泉、露天風呂、流れる演歌、風呂上りに大広間で見るTVと片手のコーヒー牛乳、不思議と心地よい居心地、そしてひとっ風呂浴びた後、外に出たときの風の心地よさ、至極の楽しみである。 温泉といえば、演歌がよい。流行の曲など温泉に似合わない。露天風呂に入り、流れる演歌のもと、湯けむりの間に垣間見える月、星、また雨の日もおつでよい。普段演歌など聞かないのに、演歌の流れる中、温泉に入っているとき、日本人であることの喜びを感じるのは何故だろう。 千葉に戻り、その楽しみがもうない。温泉の元を使っても、窓をあけて露天風呂の気分を出そうとしても、満足度は「出かけてはいる温泉」の足元にも及ばない。さらば、温泉のある生活よ。 |