電源うんちく話 その4
いつだって最後 残り物には福があるっていうけれど.........
「本体はできた、後は電源だけだな。」
本体の回路が出来上がるまで、その回路の消費電力なんてはっきり分からないから、電源設計は最後になるのが当然のこととなっている。企業などで作っている電気製品なんて、まず製品の外形から決って、電気回路がその大きさの中に入るように設計されることもある。電気回路っていったってメインボード、インターフェースボードなどと分けて設計されるのが普通であるから、ケースの中でそれぞれのボードが与えられるスペース、つまり取り分というのが決ってくる。面白いことに、最後に残ったスペースが電源に割り当てられることが結構多い。誰だって大きいボードの方が(プリント基板の)設計をしやすいに決っているから、できるだけ多くの領地を確保したいのが本音である。したがって、残された領地はスペースが狭かったり、変な形をしていたりする。電源は部品点数が少ないからこれだけあれば大丈夫だろうなんて思われているらしい。電源設計者にとって大変迷惑な話である。そりゃ確かに部品点数は少ない。でも、電源にとって放熱設計というのも非常に大事な要素なのである。なんといってもすべてのボードの飯を作っているところである。発生する熱も相当なものになるので、部品点数のわりに熱の対流のため、意外と大きい空間を必要とする。電源設計者はそこに頭を悩ませながら、なんとか作り上げるのである。
製品として世に出す場合、ありとあらゆる環境における動作試験にパスしなければならないから、設計には常に気を使っている。ところが、個人で使う分になると一転してくる。個人で設計する分には、厳しい試験なんてするはずも無いし、第一そうそうできるものでも無い。それゆえつい気を抜いてしまう。いや、気を抜かなくても、試験をする設備を個人で持っている人はごくまれ(恒温曹までを個人所有しているようなのがいるとは思えない)なので、「このぐらいかな」という感が頼りになってくる。ただ、この感も時と場合により妥協になることが多いから困ったものである。「ちょっと放熱気が小さいけど大丈夫だと思うよ」なんて具合に。放熱設計の場合、特に電源投入時は問題が無いし熱は目で見ることができないから、「お、大丈夫じゃないか」ということになる。問題は、長く使ったり、環境が変わったりしたときである。評価試験をしなかった機器の場合、こればっかりは使い込まないと分からない。過酷環境の末、昇天した電源をみて、「根性の無い電源だ」というのは酷である。
個人で設計するときは、まず電源のスペースを十分確保してやってから本体を考えるのが良いといえる。残り物に福はまず無いのだから。
(ハムフェア94 クラブ出展物 '94 DCDCコンバータ設計入門より抜粋)