電源うんちく話 その1
飯・飯・飯
「うわっ、くせぇ!」
のっけから変な話になりそうで恐縮だが、これは飯の話し。私は寮住まいである。寮といえば、大概は飯を作ってくれるまかないさんがいるので、こちらでは作る心配はないという大変ありがたいものだ。入社から現在まで、いくつかの寮に住んだが、部屋の善し悪しより、むしろ飯の善し悪しの方がその寮がいいか悪いかを決定する重要な要素になっていることは、今までの経験上間違いはない。運が悪いと、非常に飯のまずい寮にあたってしまい、人生の楽しみの一つを奪われた気分になる。まずは、運悪くこの手の寮にあたってしまった時のお話から。
名前はふせるが、K寮の飯のまずさは結構評判なものであった。炊飯器で飯を一気に多量に炊いて、その炊飯器の飯が無くなるまで次の飯は炊かないのである。大抵、その炊飯器の底が見えるようになるのに、三日ほどかかっているので、三日に一回は三日前の飯をくわされることになる。実に当たり前の話だ。飯も三日も炊飯器に入れっ放しにされれば、においがでてくる。香りというしゃれたもんじゃない。おかまを開けたときに、そのにおいが一気に放出し、冒頭の台詞をはくのである。
うまい具合に、その寮には自炊をする設備がお粗末なものながら存在したので、自ずと自炊に走るようになる。御多分に洩れず私もそうなった。自炊なんぞしたことの無い私が自炊できるようになったのは、この寮のおかげで、ある意味では感謝すべきかも知れない。 幸か不幸か、今いる寮の飯の味は悪くない。自炊の設備は無いが、必要も無い。必要なのは、食べ過ぎによって最近増えてきたゼイ肉を減らすことであろう。
人間、いや、生き物にとって「飯」は非常に大事である。ただ、人間は我慢することができるので、まずくてもくう。電子回路の場合はどうだろうか。電子回路にとっての飯は、電気ということになる。電子回路は、飯に非常にうるさい。悪い飯を作ろうものなら、たちまち(特に細かいところで)問題を起こしてくれる。回路の飯を作り出す電源は、絶対気を抜いてはならない大事なものなのである。
(ハムフェア94 クラブ出展物 '94 DCDCコンバータ設計入門より抜粋)
なお、95年度にK寮の食堂業者が変わり、食事内容が大幅に改善されました。