テスター
電圧・電流・抵抗の測定、そして導通チェックが可能と、これ一台あれば電気の基本量を見ることができるため、電子回路を作ったり、回路解析したりするにあたり、まずは用意すべき測定器です。ものによっては、これら以外に温度やhFE,コンデンサの容量などが測れたりするテスターも存在します。
アナログテスター と デジタルテスター
テスターには、いわゆる針指示のアナログテスター(写真1)と、デジタル表示のデジタルテスター(写真2)が存在します。デジタルテスターがずいぶん安くなった現在では、デジタルテスターをお薦めしますが、用途によってはアナログテスターのほうが良いという場合もあるため、自分の用途に応じてどちらを先にそろえるかを決めると良いでしょう。
アナログテスタ
アナログテスタのメリットは、表示が針であるという点を生かした測定方法です。正確な値よりも、大きさを相対的に、そして直感的に知りたいという場合に、アナログの針指示はかなり便利です。ボリュームをまわして、電圧最大点にするとか、最小点に調整するとか、そのような用途にアナログはぴったりです。
高周波関係がメインで、高周波プローブ(自作)をつかって発振器のレベル調整をおこなおうとするときや、送信・受信機のレベルトレースなどをよく行うのであれば、アナログテスタは是非そろえておきたいものです。
なお、アナログテスターをあえて回路計と呼ぶこともあります(回路計とは、テスターのことを指すので、デジタルテスターも回路計なのですが、デジタルテスターを回路計と呼ぶことは少ないみたいです)。
デジタルテスタ
表示が数字で直接出るため、読み取り誤差がないというメリットがあります。また、テスタ自身の確度もアナログテスタに比べてよいため、正確な測定をすることができます。測定機を自作しようとか、直流レベルの実験をよく行うというのであれば、このデジタルテスタをお勧めします。なお、デジタルテスタのなかには、表示をアナログテスタのように針表示やバーグラフにして見せてくれるものもありますが、サンプリングしているという動作をしている以上、残念ながらアナログテスタほど針表示は生きません。
アナログテスタに比べ、小型・軽量・正確であるため、とくにアナログ表示にこだわりがないのなら、このデジタルテスタのほうをお勧めします。
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写真1 アナログテスター hFE測定や容量測定などができる高級品!バイトしてやっと購入したものです。 ちゃんとメータの後ろに鏡もついてます。 かなり使い込みましたが、自作内容が高周波から低周波に移り、それにあわせてデジタルテスターを買ってからはほとんど使うことがなくなっちゃいました。 |
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写真2 デジタルテスター テスターとして基本的な電圧計・電流計・抵抗計・導通チェッカを備える。オプションで温度測定も可能となる。私としては、10Aの測定レンジがあるのがうれしい。 アナログテスタと違い、正負を気にする必要が無いため、COMリードをGNDに固定しっぱなしで回路のありとあらゆる場所を測定できるので大変便利です。 |
テスターの確度
主にデジタルテスターの話になりますが、テスターの確度は、値段によりピンきりです。4万とか5万円もするような高いものなら0.02% of reading程度のものがありますし、1万円以下のものですと0.5% of readingから2% of Readingという確度です(いずれも直流電圧確度)。一般的に使う用途であれば、1%〜2%程度のものでも十分かと思います。といいますのも、1% of Readingの確度といえば、5Vを測定したとき、誤差は50mVです。われわれが何か工作をしたとき、5.00Vか、5.05Vかを正確に知る必要がある というような事態に遭遇することってあるでしょうか。よほどのものを作らない限り、まずないと思います。それに、高確度品のテスターは、定期校正をおこない常に表示値が信用できる状態にしておかないと(常に調整をするというわけではありません。間違い無く確度仕様に収まっているかを確認するための値づけ校正を行うということです)、せっかくの高確度の意味が無くなってしまいます。しかるに、高確度品のテスターは、年に1度は定期校正を必要としますので、維持費もかかります。逆に定期校正をしなければ、いくらいいものを持っていても宝の持ちぐされで終わってしまいます。とりあえず自作をするにあたってのテスターは
普段何かを作る上で、確度が必要十分である
自分が使うであろう測定機能を持っている
という点に着目するのが良いかと思います。もし購入前にためし使いができるのなら、サンプルレート(表示の更新速度)もチェックしておきたいところです。
アナログテスターの確度は、だいたい2%ぐらいでしょうか。アナログの場合、数値表示は出ませんから、針の値を読むところで、針を見る角度により読み取り値に誤差が出てしまうという欠点もあります。この読み取り誤差をできるだけ減らすために考えられたのが鏡です。CLASS1のメータには目盛りの下に鏡がついており、針と、この鏡に映った針が重なった点を読めば、斜めから針を見てしまうという誤差はなくなります。
テスターの持つ機能
テスターは、基本的に 電圧・電流・抵抗 が測れます。最近は導通チェッカやLEDのチェッカなどの機能も標準でついているものが多く、だんだん多機能になっていきます。
導通チェッカ
ひょっとしたら、テスターで一番使う機能かもしれません。プリント基板のパターンがちゃんとつながっているかどうか、配線が切れていないかどうかなどをチェックします。導通していれば「ピー」というブザー音が鳴ったりします。
LEDチェッカ
LEDの点灯チェックや、アノード・カソードがどちらなのかを確認するのに用います。
hFE
トランジスタの直流増幅率の測定
トランジスタ単体の故障診断や、あえて「hFE=200ぐらいのトランジスタが欲しい」と選別するときなどに使用します。hFEは、同じ型名のトランジスタであってもかなりばらつきがあるため、たまに調べてみたくなるときがあります。
真の実効値測定
消費電力を計算するとき、正しい実効値を知る必要があります。アナログテスタや真の実効値測定のないデジタルテスタなどは、正弦波以外の実効値を測定することはできません(*1)。そこで、実際に実効値を演算回路により求め、どんな波形であろうと正しい実効値を表示するというものがこの真の実効値測定です。なお、真の実効値測定には、クレストファクタ(実効値とピーク値の比)3以下という規定しているものが多いです。これは、内部回路のダイナミックレンジには限界があるためです。したがって、これ以上のクレストファクタを持つ波形は正しく測定できない、すなわち、どんな波形でも正しい実効値を表示できるわけではないということですので、使用するときはクレストファクタのことを頭に思いながら使用してください。
*1
アナログテスタの交流測定は、内部で整流して直流(脈龍)に変換し、これを可動コイル型の直流計器で測定しております。入力波形が正弦波であったときの指示を実効値の目盛りにしたものが交流電圧測定の目盛りです。このため、正弦波交流以外では正しい測定値が得られません。これと同じように、デジタルテスタの実効値も、正弦波交流でを前提として、換算しているだけです。したがって、入力波形が矩形波などのように、正弦波ではない場合、正しい結果となりません。
温度測定
指定の熱電対をもちいることにより、温度が測定できるというものです。
温度測定は製作品に対し、以下のような確認を行うときにするときに用います。温度センサとして熱電対(ねつでんつい)を用いるものが多いのですが、熱電対は、材質によるちがい(熱起電力特性の違い)により、数多くの種類がありますので、そのテスターにあったものを用意しなければなりません。一般用途には、値段が安く、測定温度範囲も電気機器の温度測定をカバーする、JやKタイプのものの使用を前提としているものがおおいです。
各素子の温度マージンの確認
熱設計をしても、それは机上の計算であって、実際には風の回り方などにより計算値とはずれてくるものです。そこで、最悪条件で動作させたとき、ホントにその放熱器で放熱が足りているのかなどを確認します。
放熱器の熱抵抗の測定
温度測定ができれば、ジャンクなどで手に入れた放熱器の熱抵抗を求めることができます。
容量測定
uFオーダーの容量測定ができます。心持ち、この値より大きな容量のものが欲しいとか、選別したいとかいうときに用います。通常の自作において、この機能を必要とすることは、あまりないかもしれません。
周波数測定
ちょっとした周波数カウンタとして使用できます。だいたい100kHzまで測定できるものが多いようです。低周波発振器を自作した場合に重宝する機能です。
通信機能