









明るい高齢社会の振り付け役 
(ライフコミューン社長 佐々木 裕志氏 聞き手は日経編集委員 辻 教雄)
(日本経済新聞 1998年2月2日(月)夕刊から転載)











老人介護と医療をいち早く一体化













「老人介護で金もうけ」と批判も
(低価格の介護施設、人気集まり手ごたえ)











四人に一人は老人という超高齢化社会が2020年に到来する。そんな時代には
従来の老人ホームでは機能不足と、医療と介護を統合した老人用施設を民間事業と
していち早く展開。生きている喜びも必要とソフト面でも次々とアイデアを出し、
高齢者社会ビジネスの風雲児となっている。目指すは、明るい高齢社会の振り付け
役だ。
老人用介護施設を始めとたのは91年で、37歳の時でした。それまでは、横浜
のおじの冠婚葬祭会社の新事業として82年に私が始めた人間ドックによる検診事
業を担当していました。この検診センターが、老朽化と後継者不足で困っていた市
内の病院と合併することになり、病院の建て替え後に隣で介護サービスを始めたの
です。きっかけは、ドックで受診された方々の事後の問題でした。
当時、ドックの検診で異常が見つかった人は市内にいろんな病院を紹介していま
したが、お年寄りが多かったこともあり、治療が終わってさて退院という時、体力
の低下で寝たきりに近い状態になる方もいました。医師は「年だから仕方がない」
で済ませられますが、、家族の方は「我々はどうすればいいんだ」と途方に暮れて
いました。
幸せの第一歩は健康からとの思いで始めた人間ドックですが、かえって寝たきり
の人を作っているのではないか、長い間、悶々(もんもん)としていました。人に
喜んでもらうというサービス業の原点から見れば、大きなミスだったからです。











既存の有料老人ホームは健常者が中心で、入居料も3千万ー5千万と高額だ。低
額の場合も、自治体の特別養護老人ホームや社会福祉法人の介護施設は介護に対応
するだけで、医療は別になっている。
解決策として、建て替える病院の中に要介護者向け住宅を併設すれば医療と介護
が同時にできるではないかと考えました。低層階を病院、上を住居にというわけで
す。この案を神奈川県に申請すると、「医療法は病院に混合施設を認めていない」
とにべもない。病院棟と住居棟を1.5メートル離さざるを得ませんでした。
この住居棟にしても、県の見解は「老人を10人以上入居させると老人施設とな
り、共同の炊事場、居室が必要」という建前論でした。個人のプライバシーを重視
した新しいタイプの介護施設を考えていたので、「既存のマンションで6歳以上の
人が10人いれば、どこかをつぶして共同の炊事場を作らせるのですか」と聞き返
しました。すると、「微妙なところだが、まあいだろう」。ともかく、医療や福祉
の分野は規制でがんじがらめです。
ようやく実現にこぎつけた「ライフコミューン横浜」ですが、オープン当初は医
療機関や福祉施設団体などから様々な嫌がらせありました。「老人で金もうけをす
るとはけしからん」というわけですよ。悔しかったですね。私は有料老人ホームに
も行けない経済的中間層を対象に、入居金を有料老人ホームの半分以下の千ハ百万
五十万円としました。広告を出すとあっと間に45人の募集枠が埋まり、手応えを
感じる一方、信用を築くことが最大の解決策と考えました。それがうまくいって、
今では六施設と民間では最多になっています。











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