櫓となると現存、復元、移転をあわせると、全国にかなりの数が存在します。
櫓の目的は物の収納と物見であり、語源は中世の矢倉矢蔵と呼ばれた弓矢を常備した建造物から来ています。
近世城郭の櫓は、松永久秀が信貴山城で建てたのが最初といわれ、その櫓に多聞天を置いたのが、多聞櫓の由来とされています。
櫓にも種類がありますので、簡単に紹介しましょう。



櫓の名称

櫓の名称はいろいろあります。その名称にはある程度のパターンがあり、代表的なものを下記に少し紹介します。
方向や位置を示したもの
東櫓・西櫓・南櫓・北櫓・隅櫓・丑寅櫓(艮櫓)・辰巳櫓(巽櫓)・未申櫓(坤櫓)・戌亥櫓(乾櫓)・鬼門櫓など

武器、武具の収納を目的
武具櫓・弓櫓・弓矢櫓・鉄砲櫓・具足櫓・馬具櫓など。

順列をつけたもの
いノ櫓、ろノ櫓、はノ櫓〜おノ櫓 ・ 一番櫓〜七番櫓など。

廃城になったものを移築したもの
伏見櫓・清洲櫓・宇土櫓など。

戦とは関係ない風情な名前のもの
月見櫓・富士見櫓・潮見櫓・化粧櫓など。



櫓の種類

無理に区別する必要もありませんが、櫓の構造で区別すると下記のようになります。
( 別に櫓に限った種類ではありませんが..)

井楼 井楼(せいろう)

中世城郭の櫓の一種で、おもに丸木を高く組み上げ、物見を目的として使用された。
写真: 逆井城(模擬井楼)
特徴
・組み立て式で、合戦時に使用される。
・近世でも戦いの時は使用した。
・もちろん現存するものはない。

平櫓 平櫓・多聞櫓

一般的には、櫓と櫓、櫓と城門を連結する細長い櫓のものと、単独で倉庫の役割のものに代表される。
写真: 小田原城(二の丸隅櫓)
特徴
・内部は二階建てのものもある。
・その他、渡櫓、続櫓、走櫓などある。

二重櫓 二重櫓

一般的な櫓は二重櫓に代表され、近世の城郭では多く造られた。
写真: 新発田城(二の丸隅櫓)
特徴
・一層目と二層目が同じ大きさのものもある。

三重櫓 三重櫓

ほとんどが天守の次に大きな建造物で、天守が焼失した後に再建がされなかった場合は、天守や御三階櫓に格上された城もある。
写真: 高松城(艮櫓)
特徴
・他の城から移築した伝承を持つ三重櫓がある。
・平櫓、二重櫓に比べて、三重櫓はかなり少ない。

櫓門 櫓門

左右両脇の石垣の上に渡櫓などがまたがり、下方中央部に門扉をもつもの。
写真: 丸亀城(大手門二ノ門)
特徴
・近世城郭の大手門はほとんど櫓門。
・渡櫓形式、楼門形式、多聞形式、隅櫓付形式などある。



見所ある櫓の城

私が実際に見た城で、見所のある櫓がある城を紹介します。 まだ見ていない城は割愛しています。
弘前城
未申櫓、辰巳櫓、丑寅櫓の三つの三重櫓が現存しています。あまり大きくはありませんが、個性的な姿をしていて一見の価値はあります。

土浦城
楼門形式のかわいい櫓門が現存しています。たいしたことないかも知れませんが、何しろ北関東では唯一の現存遺構(移設は除く)ですので。

江戸城
富士見櫓がお勧めです。この均整の取れた完成度の高い三重櫓は、古河城や関宿城の御三階櫓のモデルとなりました。

新発田城
楼門形式の本丸表門と、二重櫓の二の丸隅櫓が現存します。あまり大きくないものですが、ともに海鼠壁を持つめずらしいものです。

金沢城
隅櫓付形式の櫓門で、海鼠壁をもつ石川門が残ります。内部には、桝形の二ノ門もありますが、私は見ておりません。

名古屋城
西北の隅にある清洲櫓は、最大の現存三重櫓です。清洲城の廃材を再利用したことから、この名前が使われています。 私は名古屋城には行ったのですが、この櫓は見ていません。(一生の不覚)

岡山城
天守の西にある月見櫓は、現存の二重櫓ですが、これも結構大型です。この櫓もよく見ていないのです。(二回目の一生の不覚)

福山城
なんといっても伏見櫓でしょう。 文字どおり伏見城からの移転らしいです。復元のコンクリート建造物の中で異彩をはなっています。

高松城
月見櫓と艮櫓の二つの三重櫓が残っています。特に、月見櫓は真壁造りの均整の取れた容姿で、小藩の天守に匹敵するほどの大きさです。