照りはじめた初夏の日ざしがまぶしく、青葉まばゆい五月、立夏から15日経ったこの頃から、蚕は眠りか

らさめ、クワの葉を食べ始める。 ベニバナは黄色から紅に。ツツジは華やぎをそえ、野には風わたり、麦

穂が波打つ。 山々では自生のシャクナゲがひっそりと咲き、野辺を染めていた春の植物も、花を散らして

実を結び始める。一年を通じて心身ともにリフレシュし、自己啓発出来る時期はそう長くありません。その

中でもこの季節は最適と申せましょう。一年でもっとも自然の元気がみなぎるのがこの頃なのです。

バイカウツギ が梅に似た小さな白い花をつけ、サツキ梅やヤマボウシも風に白い花をゆらしております。

純白、淡い紅色、黄色 ・・・ さまざまな花色のシャクナゲが走り梅雨に濡れる頃、山々が緑に包まれ、シ

ャクナゲの花が美しい頃、深い森や沢音がかすかに聞こえる渓谷などから、ヒンカラカラララ ・・・ と高ら

かなコマドリの歌声が響きわたるという。森の深いところで鳴くので、ほとんどその姿は見られないが、あ

ざやかな赤褐色の小鳥で、夏に中国大陸から渡ってくるという。 あのさえずりが深山や渓谷に響きわた

ると、景色はもう夏模様へと染まり始める。 ウグイスが春の訪れを告げますように、ホトトギスが初夏を、

そしてコマドリが夏の訪れを告げるのです。まだ梅雨入り前ですが、夜ともなれば虫たちの鳴き声がよく

聞こえます。

 

「 ウエ−バ− クラリネット協奏曲 」

クラリネットという楽器は、オーボエと同 じく、瞑想的で哀愁を帯びた音色が特徴です。オーボエは更にメルヘンチィックな雰囲気

を、クラリネットはロマンチィックな雰囲気を醸し出します。オーボエの曲の極め付けはモーツァルトにあり、協奏曲ハ長調、オー

ボエ四重奏曲、アダージョ ハ長調 ( イングリシュ・ホルンでも ) です。小品ではシューマンのオーボエの為の三つのロマンス(ク

ラリネット、Vnでも)があり、特に第二番が印象深い。 二つの楽器の決定的な差異は、音域の違いであろう。クラリネットは極めて

高い音から低い音まで出すことが可能で、めくるめくような流麗で華やかな音から、どこかくすんだ侘び、寂びの世界まで多彩な音

色が可能です。この魅力的な楽器のために、ウエーバーは5重奏曲、小協奏曲、協奏曲を書いております。ウエーバーはドイツ

国民オペラを確立し、「魔弾の射手」 のみで有名と思われがちですが、器楽曲にも佳曲を残 している。シューベルトやシューマン

という初期ロマン派の二大巨匠の影に隠れた感があるのは否めない。ウエーバーの音楽の魅力は、流麗で甘美、通暁した弦楽セ

クションの作曲テクニック、ドラマチィックな表現などです。オペラの序曲 「オイリアンテ」、「オベロン」 などを聴くと、抜群のノリの

よさ、ぞくぞくするフレーズなどウエーバーならではのものだ。ウエーバーのクラリネット協奏曲は、あのモーツァルトの傑作に迫る

ほどのものであろう。モーツァルトがA菅のクラリネットを用いた典雅でやわらかい音色なのに対して、ウエーバーはB菅を用いた

ウエーバー特有の劇的な緊張感をもち、耳も眩むばかりのヴィルトゥォーゾ風の流麗で華やかな技巧 をちりばめ、広い音域を

充分に駆使した色彩的な独奏部に仕上げているのである。