世界の三大花木といえば、バラ、シャクナゲ、ツバキと云われております。 バラの魅力は色、形が 

完璧であること、それに高貴な香りでしょう。 「 色彩のシンホニー 」  といわれるほどの色彩美の極致。

優美で華麗な花姿、更に中心に向かって渦を巻く " 求心的 " な姿はまさに 「 究極の造形美 」 と申せ

ましょう。 バラ色の未来、バラ色の人生、バラ色の夏休み、とバラは明るく希望を表わす花のキング。

バラを素材として唐詩で名高いのは、高駢(こうべん)の七言絶句 「 山亭夏日 」 です。

" 緑樹陰濃やかにして夏日長し 楼台影を倒にして池(ち)とうに入る 水晶の簾

動いて微風起こり 一架の薔薇満院香し "

(みどりしたたる夏木立の影、楼台をさかさまに映した池の面、吹きくる微風が水晶のスダレを動かすと

一棚のバラの香りが中庭に満ちあふれる )  このとき山中の 「 あずまや 」 は俗塵を離れた清涼の

世界であり、人は炎暑の何物 たるかを知 らない。

五月も終りになりますと、鳥たちも少なくなります。繁殖のため 深山へ帰ったのでしょう。庭にいるのは

きっと巣が近くにあるのでしょう。バーベナやザクロの花にチョウチョ が群がり、その上をトンボがすい

すいと飛んでいきます。更に上空高くにはトビが旋回 しています。千利休は " 花は野にあるように " と

と記しております。季節感を大切にする茶道では茶席に活ける茶花を自然からの贈り物として珍重い

たします。五月ですとてっせん、はりえんじゅ、ふたり しずかなど四季折々にひっそり咲く花は多々あ

ります。これからはこれら野に咲く花やチョウチョ、トンボ などが目を楽しませてくれるでしょう。

〜 野バラ 〜

少年が一本のバラを見付けた、荒野のバラを、

バラは生き生きとして朝のように美しく、少年はもっと近くで見ようと走り寄って

とても喜んでそれを眺めた。

バラよ、バラよ、赤いバラよ、荒野のバラよ。

 

少年は言った、「おまえを手折るぞ、荒野のバラよ!」

バラは言った、「あなたを刺しますよ、あなたがいつまでも私を忘れないようにね、

私は堪え忍ぶつもりはありません。」

バラよ、バラよ、赤いバラよ、荒野のバラよ。

 

だが乱暴な少年は手折った、荒野のバラを。

バラは逆らって刺したが、悲鳴も絶叫も役立たず、結局堪え忍ぶ他はなかった。

バラよ、バラよ、赤いバラよ、荒野のバラよ。

ー 詩・ゲーテ 曲・シューベルト、ウエルナー ー