西南海観光鉄道
西南海観光鉄道

 西南海観光鉄道は、軌間762mmの軽便鉄道です。本線にあたる西南海線は、1915年創業の西南海軽便鉄道が前身です。幹線ルートから外れた城下町、西南に鉄路を引こうと、資産家らが1067mmの旧西南鉄道(後の国鉄・西南線)を一足先に実現させていましたが、肝心の西南駅は、東川の架橋に多額の費用がかかることから、市街中心から遠く離れてしまいました。そこで、旧西南鉄道の西南駅と西南市の市街地を結ぶことに加え、西南半島の南南西の端にある漁港、西南海漁港に水揚げされる海産物を輸送する目的で西南海軽便鉄道が設立されました。東川の架橋問題もあって、設備が簡素な軽便鉄道として建設が始まりました。

 戦中の企業統合で西南交通となりましたが、戦後、漁港近くの湯治場を温泉リゾートとして開発し、「西の伊東温泉」として売り出す計画が持ち上がり、分離独立して西南海観光鉄道として再出発しました。その後、観光客の輸送力増強を目的に改軌し、さらに西南交通鉄道線と接続して半島を1周する構想も浮上しましたが、採算性などから実現できず今に至っています。温泉リゾートの開発も遅々として進みませんでしたが、昔ながらの温泉保養地の佇まいを残している景観が評価されて、冬季の観光客輸送は比較的堅調です。夏季も海水浴客の輸送でかなり賑わいます。また、蒸機を大切に残していることも観光客を引きつける要因となりました。国鉄にも蒸機が残っており、SLブームの到来もまだなかった時代ですが、大型蒸機とは違った魅力を放つ「ミニSL列車」として、コッペルが牽引する観光専用列車も好評を得ています。

 一方、西南市内の沿線では、小規模ながら住宅団地や工場団地が開発され、大学・高校の移転もあって、朝夕は通勤通学客のラッシュもあります。国鉄・西南駅と市街の中心地・大手前間は最も輸送需要が多い区間ですが、同系列の西南交通が運行するバスとの競合が激しく、DCによるフリークウェントサービスで懸命に対抗しています。

 西宮寺線は、1925年に西南市西部の田園地帯の農産物輸送と名刹・西宮寺(さいぐうじ)の参詣客輸送のために開業しました。近年は道路整備で農産物輸送はトラック輸送に奪われがちで、西宮寺への旅客輸送も観光バスの伸びが目立ち、苦戦しています。

 苑町線は、半島中央の畳表の町、苑町に住む西宮寺の有力檀家らが中心となり、藺草を中心とする農産物輸送や参詣客の利便を図ろうと、1920年に西宮寺軽便鉄道として開通させました。5年後の西宮寺線の開通後、経営難に陥り、西南海軽便鉄道に買収されています。藺草輸送がトラックに移り始め、参詣客輸送も西宮寺線とバスに奪われ、早晩廃止は避けられないとみられていますが、沿線には強力な反対運動が起きています。


路線図 駅名一覧