No.95
            アメリカの正当防衛法


アメリカは銃社会である
(連邦憲法(修正U)で、その保持する権利が謳われている)。

そうでなくても、古くからの(イギリス由来)の
正当防衛法のようなコモンローのルールがある
(Castle doctrineとも、Stand-your-ground lawsとも呼ばれている)。

後者とCastle doctrineとの違いは、
Castle doctrineでは、自分の家とか、仕事場とか、
一定の不動産との絡みでの行使を要件とするのに対し、
後者のルールは、この不動産との関連をそれほど必要としない。

そんなアメリカは、酔っぱらって午前様で
うっかり間違えて他人の家などに入ろうとしようものなら、大変である
(撃ち殺される覚悟が要る)。

コモンローのルールなどは、先例の積み重ねの中に横たわっているが、
印刷した活字法にしている州が、41州ある。

うち24州が、後退義務を定めないで、防衛のための攻撃をサポートしている
(残る17州が後退義務を定める)。


では、後退義務を定めない24州の1つ、南部ミズーリ州の制定法を覗いてみよう。

州法典563.031条は、1〜5の項から成る。
第1項が、武器等を使用してよい要件を定める((1)〜(3)の小項から成り、かなり細かいが)。
要は、本人が「合理的にそう思う」
(reasonably believes)が2回出てくる。

1回目は、その武器などを使用が防衛上必要と考えることであり、
第2回は、他人が不法に武器などの使用をしかかっていると考えることである。

第2項も(1)〜(3)から成るが、他人の侵入、不退去などを要件としている。
第3項は、防衛者が後退義務を負わない場所として、
自らの所有、リースその他で権利を有する場所にいること、の状況設定をしている。
第4項は、防衛行為としては、身体的抑圧(physical restraint)も入ることを述べ、
第5項は、犯罪成立阻止事由としての正当防衛は、
被告が主張・立証責任を有するとの手続法上のルールを述べる。

ただし、上記の第2項でいう他人の侵入、不退去を言えば、
次は国が「被告は、合理的にそう思わなかった(思えなかった)筈である…」
ことを主張・立証しなければならない。


                                2017年3月3日