No.91

                        CIAという機関


先のアメリカ大統領選挙では、ロシアが(1つの有力説としてプーチン大統領の支持の下)、
民主党の、特にその代表候補、ヒラリー・クリントンの陣営のコンピューターシステムに
ハッキングを仕掛けたという。このニュースは、メディア上でも何回か流された。

オバマ大統領もこの情報に基づき、
ロシアに対し、何らかの措置、
同種の措置
(like-for-like response)を採ることを示唆していたという

彼は、予てプーチン氏にそうしたサイバー攻撃をしないよう、
若し行ったら、反撃がありうることを、警告していたとも伝えられている。

この点で、浮上するアメリカの国家機関の1つが、
中央情報局(CIA)や国家安全局(NSA)である*。

NPRは今回、政権とともに交代する
そのブレナンCIA長官
(John Brennan)にインタビューしている(12月23日)。
長官はしかし、この同種の
(like-for-like)措置に反対している。

インタビューの中で、反対の理由を述べている。

「アメリカの基本は、民主主義にあり、人民による選挙にある。
この原理に逆らうような真似は、すべきではない。
我々の相手が、詐欺
(skullduggery)のような汚い手を使ってきたからといって、
その真似をすることは、この原理の偉大さに泥を塗ることになる」。

「ところでトランプ氏は、『CIAはダメだった』と攻撃しているが?」
(これは、サダム・フセインが大量破壊兵器(WMD)を抱え込んだとの情報が間違っていて、
それがイラク戦争につながったことを指している)
と問われたのに対する長官の答えは、

「CIAも、当時100%正しいとは断言してなかった
…まぁしかしCIAは、それこそ無数の諜報活動に携っており、100点満点と言うわけには行かない。
諜報活動というものは、科学とテクニック
(science and an art)の双方を必要とする。
CIAは、過去にこの国のためになること、
この国を危険から救うことを、いくつもやって来ている…誇ってよい」、
である。

最後に、CIAはこの先、トランプ氏側に立って仕事をするのか?
と訊ねられ、答えている。

「CIAは、没政治
(apolitical)だ。脱党派(nonpartisan)だ。
誰の側にも立たないし、その反対でもない」。


*CIAは、冷戦時代を迎えつつあった1947年法(National Security Act of 1947)により作られ、
 イランの王制復活に力を貸すなど、またソ連国内でU-2偵察機事件を起こすなどをしている。
 NSAも1947年以前は、はっきりした組織でなかったものが、同法の下で新しく組織化された
 (小著、アメリカの憲法成立史―法令索引、判例索引、事項索引による憲政史―、八千代出版、2015、p.768、920)。



                                    2017年2月9日