No.89

                 英米同盟


イギリスのメイ首相がアメリカを訪問して、
外国首脳としては第一番にトランプ大統領との首脳会談をした。

そこで彼女が強調したことは、
両国が、絆によって結ばれているという点である。
彼女は、これを「特殊な関係」
(special relationship)という。

トランプ大統領がこれからどんな外交をくり広げるか、
ロシアのプーチン大統領との関係については、トランプ大統領の考えは、
他とは(周りの共和党のお歴々のそれも含め)、「やや違う」という。
メイ首相の見方とも違っていた。


イギリスの首相のことだから、トランプ氏が、
アイゼンハワー大統領以来、2人目のドイツ系大統領となることも承知であろう。

彼の父フレッドは、ブルックリン生れだが、
両親とも、ドイツのカールスシュタット市の出身である。
また彼の母親は、イングランドと何十回も戦争をしてきた
スコットランドの北の最果ての島ルウィス島出身である。

トランプ大統領とメイ首相との共通点
(政策の一致点)を1つ挙げるとすれば、
「アングロ・アメリカンの孤立主義」と言う点である。

イギリスは、2016年の国民投票でEUからの離脱を決めた*。

アメリカの孤立主義
(Isolationism)は、19世紀前半のモンロー主義以来の伝統だ
(20世紀の30年代には、連邦議会が4回も、孤立主義に立った法律を可決していた。
そのためF.D.ルーズベルト大統領が、
ナチス・ドイツの勃興に対抗してイギリスなどに武器援助をするにも、
立法上の大変な迂回を工夫しなければならなかった)。

トランプ大統領が本当に、その手の孤立主義に立つことになるのかは、
この先、見極めるべきことである
(彼は、何しろ世界の20数ヶ国に自ら投資をしてきている)。

彼のは、日常見聞きするアメリカ国内での移民問題、麻薬問題、
犯罪問題などに災された、余り「○○主義」などとは係りのない、
極めて現実的な見方、主義ではないか。

トランプ大統領は、兄のフレッドがアル中で早く亡くなっていることもあり、
一生酒、たばこを絶つ決心を固め、今日まで守っている、
とても自己保存本能の、その面での自制心の強い人だ。

今後、ロシアとの、そしてイギリスを含めたヨーロッパの国々やEU、
そしてNATOとの、関係をどう扱っていくか見ものである。


*この離脱の件で、イギリスの離脱担当相と市民らとの間の事件で、イギリスの最高裁
 (2009年7月31日までは貴族院(House of Lords)が行っていた)は、8:3で
 「議会の決議を要する」、との考えを示した(UKSC 2016/0196、2017年1月24日)。



                                    2017年2月3日