No.81

       連邦の縁故禁止法(1967 Anti-Nepotism)


トランプ氏の第45代アメリカ大統領就任を控えた週のことで、
この処、専らトランプ氏が話題を独り占めしている
(政界だけではない。ハリウッドのお笑い番組まで、どちらを向いても、である)。

そのトランプ氏が、
相性がいいらしい義理の息子(長女イヴァンカの夫)クシュナー氏(36歳)を、
ホワイトハウス内に入れる(大統領補佐官にする)という。

去年の11月からちょくちょく取り上げられていた近親制限法違反の議論が、
再びメディア上で集中して見られるようになった*。

この法律は、例のケネディ大統領(第35代)のときに、
弟のロバートを司法長官にすると言うことで、大分揉めたが、
その時に作られた。

ケネディ大統領の下で副大統領だったジョンソン氏
(Lyndon Johnson)は、
とてもこの近親の任命を嫌っていて、
ケネディ大統領が暗殺されて、自らが大統領になった後、
この法律の成立に力を尽くしたという。

法文中の言葉、「近親」
(relative)は、父、母に始って、
5行にわたりその対象となる者の範囲を、1つ1つ全て列挙している
(「何親等以内の…」などの形ではなく)。

このように、任命前から喧しく議論されていたことで、
実際に任命が発表されると、当人のクシュナー氏は、
「自分は、政府の給料は(辞退する)受取らない」、と公言した。

これには理由があり、法律自体の中に、
「当人は受取る資格がなく、財務省も支払ってはならない…」
と定めていることがある。

「役所“agency”内の地位についてはならない」とする法律の文言自体には、
大統領の秘書的な面もあるホワイトハウス内の補佐官も、それに当るのかの疑問もある)。


NPRが、ニューヨークタイムズが報じていたこととして出してきている、
もう1つの倫理上の問題が別にある。

彼がゴールドマンザックスの社長コーン氏を、経済諮問委員会に推薦していたことと、
ゴールドマンザックス系の銀行は、クシュナー社の融資銀行であるという点である。

しかし、クシュナー氏の岳父のトランプ新大統領は、
「彼は大変な価値だ…キャンペーン中もずっと彼の言うことに頼ってきた
…政府内でも、大いに力を発揮してもらいたい…」
式のことを言って、クシュナー氏をベタ誉めしている。

*その法律とは、5 U.S.C. 3110で1967 federal anti-nepotism lawとも呼ばれる。



                            2017年1月24日