No.79

          アメリカ大統領による政権交代


アメリカには弱小政党もいくつかあるが、
建国以来約230年間、略ずっと2大政党の形できている。

一方、政府の執行部のトップだと、大統領は、
連邦憲法でその権限、責任から選出方法まで、しっかりと定められている(U、1〜4)。

権限の中でも特によく知られているものが、
陸、海、空、マリーンなどの総司令官
(Commander in Chief)であろう(U,2)。

これに劣らぬくらい重要なのが、
世界中へ出している大公使や最高裁判事をはじめ、
政府の行政部門の百官の任命権である
(百官と言っても、実質的には約1000人の任命をする)。

このため、大統領が1つの政党から他の政党へ変ることを含んだ政権交代にあっては、
この約1000人の人が、事実、ゴロゴロと変ることになる。

ただし、大統領の任命権には、1つ制約がある。
その行使は、
「連邦議会上院
(senate)の助言と同意(Advice and Consent)に基づかねばならない」
という点である(U、2(2))。

実際はどうなっているかと言うと、
大統領と連邦議会、殊に上院の勢力とが別々の党に属するときは、中々面倒なことになる。

NPRは、一例として
国家安全保障プロジェクトと言う諮問機関(委員会)の議長をしているウィルソン氏
(Doug Wilson)が、
2013年に任命された時の様子について話を聞いている。
その委員会は、無給の3人、3人の委員会から成り、
民主党員のウィルソン氏は、その民主の空席を埋めるために、オバマ大統領により任命された。

そこまでは良かったが、何と上院の同意の手続が終り、
ホワイトハウスに書類が回り、正式になるまでに「1年かかった」と言う
(上院も、共和党が多数を占めていることが大きい。
これに対し、同じ与党ならば、「すいすい」と行く例が殆んど)。

「なぜ、そんなに時間がかかるか」。
背景調査
(background check)が行われるからだ
(ウィルソン氏の場合も、遠いカリフォルニア州に居る女の知人から、
「インタビューされて、散々あなたのこと訊ねられた」との連絡を受けている)。

NPRの記者は、以上のプロセスを評して、
今のように共和、民主両党間の対立が激しいと、
「候補者は、上院から質物のように扱われる」と言っている。

そこでトランプ大統領が登場する。

閣僚以下、多くの候補の上院による質問会(公聴会)が始っている。
今回はしかし、連邦政府の倫理庁(OGE)が、(上院による同意の手続が)
「余りにも早く進み過ぎ…」、と警告を出したという
(しかし、その後の展開を見る限り、民主党議員らによる質問がかなり長引いている)。


                                    2017年1月24日