No.66

            トランプ氏とクシュナー一族


トランプ次期大統領の長女イヴァンカの夫
ジアード・クシュナー
(Jared Kushner)氏が脚光を浴びている。

以下はNPR(11月18日)の伝える、その横顔と言ってよい。

トランプ氏は選挙中、反ユダヤの言質をしていたというが、
娘婿の彼は、オーソドックスなユダヤであるばかりか、とても内気で控えめな性格、
つまり岳父のトランプ氏とは、いくつもの点で大違いの人だ。

にも拘らず、2人はしっくりと、相互信頼の絆で結ばれているという。

この謎めいたクシュナー氏につき、
MSNBCのアンカーKornacki氏ほど、その横顔を的確に伝え得る人は他に居まい
(若い時、政治記者をしていて、後にはクシュナー氏が買収したメディア
「ニューヨークオブザーバー」で、つまり彼の下で、働いていたという)。

Kornacki氏が先ず言うのは「只々、その好運に驚いた!」である。
そこにあったのは、破竹の勢いで物事を進めるユダヤ人の不動産デベロッパー、
クシュナー氏の父、チャールズ・クシュナー氏の姿であった。

その父は、同時に(主として民主党筋に)ふんだんに寄与をした(慈善団体、病院、大学)。
中でもハーバードへの寄与は2億6千万円で、
その故もあって、息子ジアードは入学できたのだとも言う。

しかし、この父のチャールズ・クシュナーの派手なデベロッパーぶりに注目し、
何かを嗅ぎ付けた合衆国検察官がいた。
後のニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏である。

父のチャールズ・クシュナー氏を訴追した。
その罪状たるや、妹の亭主に売春婦を近付かせたうえ、それを種に強請った脅迫行為であった。

Kornacki氏が言うには、この訴追により、クイス・クリスティ氏も、一躍全国的に名前が売れた。
チャールズ・クシュナー氏を訴追した件が、
自らの出世(ニュージャージー州知事になるの)に大きな働きをしたという。

この一方の出世話し、他方での父の没落話しの境にあって、息子ジアードは考えた。
そして健気に耐えた。
そればかりか、ニュージャージー州から本拠をニューヨークに移し、
後にはニューヨーク市のエリートに広く読まれている週刊誌ニューヨークオブザーバーを買収した。

家名の汚れを拭いたいと願う息子は、
2007年に刑期を終えた父とともに、マンハッタン5番街の巨大な複合ビルを20億ドルで取得した。
更に2009年には、トランプ氏令嬢と結婚。
しかも彼女は、父の了解の下に、自らユダヤ教に改宗したという。

こうした経緯をとらえて、ある記者は、
クシュナー氏がトランプ氏の強烈さを全体として和らげる効果を持つことを期待する。

トランプ氏もまた、キャンペーン中からこの娘婿の助言を受容れ、
主なスピーチの方向付けや、これからの組閣に当っても、
その考えに耳を傾ける様子を示しているという。

時あたかも、組閣のため、つまり政権移行のため、チームのリーダーとして
当初予定されていた、クシュナー氏の父を刑務所に送ったクリス・クリスティ氏が、その役から外された。
この降格について、クシュナー氏とその一族は、「何も係っていない」としている
(NPRは、そのことを伝える文の最後で、
“But then …Kushner always did speak quietly”と
締め括っている)。


                                  2016年11月22日