No.44
         アメリカの大統領選挙


アメリカの歴史始って以来初めての黒人オバマ大統領の任期も残すところ半年となった。
7年半の事蹟を振り返ってNPRは、長いインタビューをそのまま載せている(7月1日)。

記者の第1の質問は、今回の大統領選挙で言われている
アメリカ人らの怒り、イライラ(議会などに対する政治不信)から始る。

インタビュー中の長い返答を要約することは、
筆者による主観的なズレや不十分さにより、不正確となる惧れなしとしないが、次が言えよう。

上下両院ともが共和党支配に変ってしまった現在、大統領として出来ることは限られてくる。
その中でオバマ大統領の国政に対する指針は、10年以上ずっと変わることなく、
「所信を貫いてきた」といってよいのであろう
(彼自身、2004年の上院議員選挙中の発言以来、「ずっと不変だ…」と述べている)。

「議会がこれほど党利党略に出なかったら…」という気持ちはあろう。
その中で大統領が誇りに思える議題の第一が、
リーマンショック(2008年9月)からの「リカバリー」である。

これは、確かに深刻さにおいて、大恐慌(1930年代初め)に比類するものだった。
それを就任直後に、正に(立法提案など)の八面六臂の行動で、短期間に終わらせた
(金融機関の破たんを喰い止めたほか、GMなどのアメリカを代表する企業を救った)。

黒人やマイノリティの期待に比べて、「実績はどうであったと思うか」
との記者の質問に対して(つまり、公民権問題などでの実績を問われたのに対し)、
オバマ大統領が答えたのは、

「議会の両院を未だ民主党が抑えていた最初の2年間、
この第2大恐慌との戦いに勢力を取られた」である。
「それがなかったならば…もう少し…」という気持ちは理解できる。

その他、大統領は特にアメリカでの犯罪の問題に心を痛める中で、
以前から一般にも認められていることだが、再犯率の低下のための刑事法の改正にも力を注いできた。

これには、(南部州などで特に)州以下の当局が黒人やマイノリティに対し、
重点的に法の執行を集中してきたのを、多少でも改めさせたことがある
(警察の武力の行使についてのルールを見直したり、
主に麻薬絡みの犯罪者の再犯防止のための刑期の短縮を含む措置など)。

記者が言う
「トランプ氏が、不満分子として働きかけている白人の下層労働者の問題について」、
大統領は、自らの祖母(白人)が、いかに苦労しながら、
少しでもいい生活を得ようと、黒人らの同僚に伍して働いた話も交えている
(ステノタイピストの予備としての生活の中から)。

それにしても、オバマ氏を大統領に選出したのはアメリカ国民であり、
その政治が作り上げてきた選挙制度である。
1965年投票権法にしても、正にその公民権運動
(Civil Rights Movement)の成果であるが、
遡れば、リンカーン大統領による南北戦争時の施策や、
その流れの中でできた修正
(Amendments)]Vから]Xまでの憲法改正がある。

大変な国であるが、こうした人が知恵を絞ってここまで来た。
何とか、この先も頑張ってほしいと思う。


                                2016年7月11日