No.43
オバマ大統領時代の人種問題
アメリカが人種社会で、社会全体が、そして個々人(白人も黒人も)が、
それなりの大変な苦労をしていることは、このブログでも多少触れてきた。
NPR(6月30日)は、この種の問題で多くの機関によるリポートを紹介しているが、
その中の1つ、有名なシンクタンクPew Research Center(ピュー総研)が行った
近時の調査結果を載せている。
調査は、Race and Inequalityの題で、
副題が「黒と白とでは、まるでかけ離れ」となっている。
何が「かけ離れ」ているかというと、
「人種平等を実現するために必要な措置が、これまででどの程度採られてきたか?」
の質問に対する答えで、白人の40%近くが「行なわれた」、としているのに対し、
黒人では僅か8%のみが、同様の答えをしているというものである。
両者は、この実績の評価において違うだけではない。
将来の評価においても大きく分かれている。
即ち、「この国がいずれ、人種間の差別をなくすような措置をとるだろう」と答えているのが、
黒人の42%であるのに対し、白人の場合、75%が同じような答えを出している。
調査を担当したピュー総研のHorowitz氏の纏めも紹介している。
「黒と白との間では、対話自体がとても困難だ…」
としていて、その背景には、両者の間には「基本的違い(fundamental differences)がある」
(出発点からして違う)という。
ピュー総研は、これに類した調査を、過去に何回かしてきているが、
今の時点で再度試みた理由として、
@この国での初めての黒人大統領の任期切れが近づいている、
A黒人に対する凶悪事件が相次いだ、を挙げている。
彼女は補足的に次のような調査結果も紹介している。
(@)「今日のアメリカで、人種問題に対し十分な注意が払われているか」、
に対し黒人では「払われていない」の答えが58%もある一方、
白人では27%である(ただし共和党支持の白人では59%)。
(A)人種を理由に差別されることにより、
社会で白人の2倍苦労しているとする黒人が70%いる(白人では36%)。
(B)あちこちで問題になっている警察官の態度については、
10人中8人の黒人が「扱いで差別された」とした
(2008年に行った類似の調査の結果も、今回とあまり違わないという)。
(C)オバマ大統領の時代について、黒人の5%だけが、
「人種問題を悪化させた」としていたのに対し、白人ではその比率が32%となっていた。
反対に、「人種問題を良い方向に導いた」との答えは、
黒人の半分がそう答えていた(白人では3分の1)。
2016年7月11日