No.38
          Post紙元編集長の見たトランプ氏


NPR(5月12日)によれば、
かつての第37代大統領ニクソン
(Watergate事件により、前代未聞の、後にも先にもたった1人しか例がない、
任期途中の1974年に職を辞した)
が、1980年代中頃にトランプ氏に合っていた
(トランプ氏は否定するが、どうやらニクソン夫妻は、ニューヨークでアパート探しをしていたらしい)。


既に去年の9月時点で、NY Times紙は、次の報道をしていた。

ニクソン氏は1987年12月21日に、トランプ氏宛にベタ誉めの手紙を出していたというのだ。

当時流行った昼のトークショー
(daytime talk show)で、既にメディアの注目を集めていた
41歳のトランプ氏が現れ、「病めるアメリカ。どうやってこれを治すか?」式の番組で滔々と喋ったらしい。

ニクソン氏はこう書いていた。

「私は見ていないが、家内が見て唸っていましたよ…ご承知のように、彼女は政治のプロですから
…その彼女が、『あの人なら、(アメリカの大統領に)立候補したら間違いなく当選するわ…』と言ってます
1」。


1980年代中頃といえば、ニューヨーク市は、70年代の景気後退から立ち直って、
更なる成長増大に向って弾みをつけていた時である。


さて、初めのNPRに戻ると、そこに出てくるのは、
1980年代のニューヨークで、ゴシップ欄として一番よく売れていたメディア、
「ニューヨークPost紙の第6ページ」
(Post’s Page Six)で、
その頃の編集責任者をしていたSusan Mulchyとのインタビューである。
彼女が、そのインタビューでトランプ氏を採り上げていた。

なお、この第6ページは、その時代の、そのニューヨーク市の、
「金ピカを象徴する人物」についてのコラムであった。

Susan Mulchは、NPRに言っている。

「何よりも、ださいタイプのお金持ちの代表という採り上げ方です
…何もかもが、金メッキ(金無垢じゃない)…これがトランプ氏ストーリーでした。
彼とIvankaがトランプタワーのオープニングセレモニーをした時、
「え!世の中にピーチ・マーブル(ピンク色の大理石)ってこんなにもあるの?」っていう感じでした。

彼とニクソン氏とが3時間も会っていたのはその頃のことですが、彼は、それを否定していました。
しかも、そのニクソン氏たるや、当時から必ずしも「真実味溢れる」っていう評判ではなかった
(…not exactly have reputation for being totally truthful..)

ニクソン事務所も会ったこと自体を確認していたし、
しかも要件たるや、別に何と言うことのないこと(アパート探し)だったのに、
なぜ、隠したり、嘘をついたりするんでしょう」


NPRが、
「そうした中でも、特にひどい
(outrageous)と思われたことは?」と、質問したのに対する答え。

「57丁目にあった老舗のデパートBonwit Teller取り壊し問題ですね。
アールデコの彫刻面で飾られた素敵な建物でしたよ。トランプタワーを建てるのに、それを取り壊したんです。
メトロポリタン美術館は、その収蔵品の1つに加えたいとして、そのアールデコの彫刻面を欲しがっていました。

でも彼は、まるで受付けませんでした。
『ノーノー、何の役にも立たない』。そう言って、粉々にしてしまったのです」
2


NPR記者
「現在のアメリカ政治を見た時、人々は80年代のこのトランプ氏のような人を求めている
…そういう人に惹きつけられる、ということは感じますか」

「人々は、いわばサーカスみたいなものに惹きつけられているのではないか、と思います。
トランプ氏の場合、正にサーカスの呼び込みや、カーニバルの呼び込み屋と言えますよ。
彼なら、人々を小屋の中に取り込むため、なんでも叫びます。
小屋の中に2頭を持った犬がいなくたって、とにかくもう小屋の中に入れたんです。そりゃ、何かはありますよ。」



**注釈**

1 この逸話は、最近出されたMichael D’Antonioによるトランプ氏の伝記中に記されているという(2015年9月8日newyorktimes.com)。
2 NPRの記事は、トランプ氏が、ニクソンのスタイル「分割して統治する」(divide-and-conquer)から、ヒントを得ているようだと記している。



                                      2016年6月10日