No.27

              
CIAによる拷問プログラム


筆者が昔いたことのあるワシントン州シアトル近くに住む、2人の心理学者が被告にされた。

CIAによる悪名高い拷問プログラムを考案した絡みで訴えられている。
原告はCIAによって捕えられて、例のGuantanamoにいたことのある3人である
(アメリカの人権団体ACLUが、代理して訴えている)。


NPRによれば、3人のうち1人は、元タンザニアの漁師で、
CIAによって2003年に誘拐されて捕えられた。

17か月の拘束後、何の訴追もなく釈放された。

そのAbdullah Salemは、
「その間、結構長い時間、裸のまま両腕だけで吊るされていた」と述懐しているという。

「…とても痛く、とても寒かった。何の衣類もないんだ…今でも骨に損傷が残っている…」

こうした拷問には、いわゆる水責め(
waterboarding)も入っていて、
Khalid Sheik Mohammedに対しては、183回行われたという*。


2人目もやはり、訴追もなく釈放されているという(彼は、リビア人である)。
3人目はアフガン人で、CIAに捕らわれている間に死亡したGul Rahmanの親類だという。

実はRahmanのケースは、
CIAによる扱いを問題にした、連邦議会上院の諜報委員会による調査の結果が、
1年前に公開されて明らかとなった。

本件は、その上院の諜報委員会による調査をベースに出された、初めての民事訴訟である。
調査を行った連邦上院委員会は、カリフォルニア州選出のDiane Feinsteinが委員長であった。

彼女は、そのとき上院でこう言っていた。

「その他では健康に全く問題ない人が、裸で鎖につながれて
コンクリート床の上に閉じ込められていたことで、
低体温症
(hyperthermia)と疑われる形で死んでいる…」

「CIAは2人の心理学者に、この拷問プログラム作成で
8千万ドル(100億円近く)払っている…」


NPRは解説している。

「しかし、これらの訴訟で被告とされているのは、正にその2人の心理学者であって、
CIAとか政府と言った大きな組織や、その職員などではない」


NPRは、2人の心理学者のうちの1人James Mitchellとのインタビューを載せた。

「この国の最高の法律専門家に
『ギリギリだけど、違法にはならない。合法で、プログラムづくりに応じても問題ない』
と言われた」


Mohammedに1対1で会ったことがあるという上記のMitchell氏は、
Mohammedにこう言われたと言う。

「君の国(アメリカ)は、君に対し反逆する。
なぜなら人々が、この種のことに飽きて来るからだ。その時には、君は捨てられる」


NPRは、これまで司法省は、この種の民事訴訟をすべて禁圧してきた
(そのためには、「国家機密特権」が理由にされてきた)。

今回は、連邦裁判所の裁判官Justin Quackenbush氏は、
被告(司法省)側の、その種の抗弁を認めなかった。

それでも被告弁護人は、「結果について楽観視している」
(被告側が勝訴することは間違いないと考えている、と言っている)。

他方で、原告サイドのACLUの代理人のいうのは、

「もう数えきれないくらい、この手の拷問訴訟をこれまで起こしてきたが、
一度もここまで来たことはなかった」

である
(ここで、NPRは裁判官Justin Quackenbush氏が
当事者双方に30日以内に互いの情報開示につき、打合せを済ませるよう求めた、
と記している)。


*ウサマ・ビン・ラディンの下で、パキスタン、アルカイダによる9.11の首謀者とされている、1964年生まれ。


                               2016年4月27日