No.24

             
銃と警察と保険業界

アメリカで近年多く起こってきたことの1つに、
警察官による発砲事件、それによる死者の増加がある。

それも、典型的に黒人青年が犠牲になっている
(ミズーリ州Fergusonや、メリーランド州Baltimoreでの事件)。

これに対しては無論、警察官による銃取扱い規制の見直し議論など、
各種の反響が起きている
(Fergusonの場合も、司法省が新しい銃取扱い規則のモデルを示した)。


全く別の角度からこの問題に迫る議論もある。

4月1日のNPRは、このような警察官による銃の取り扱いが、「正当防衛」など、
正当化される理由がある場合以外の場合について、保険業界が当の警察官や、
その背後の当局(市など)の責任を肩代わりすることを限定する動きを示していると伝えている。

これまで、こうした事件(それは当然、莫大な損害金訴訟の提起を意味する)
の増加によっても、当の警察官も警察(市)当局も、別に痛痒を感じていない。
誰か痛痒を感じているとすれば、それは、保険業界だからだ。

そこでは第1に、所持品検査
(strip search)などを「どう進めたらよいか」式の
易しい解説を盛込んだTravelers Insurance社の、
警察官向けパンフレットが出回っている、とシカゴ大学の教授の話を引いている。


このような動きが示すのは、保険業界が、損害金訴訟の件数、
金額のスケール・バックに努めている事実である。

シカゴ大学の教授は、その例証として、Selma, Alabamaで警察署長だった人の、
「保険業界の人が、話を聞かせてくれ」と接触してきたことがあったとの談話を載せている。

ここでの保険業界の仕事の第一は、
「どんな場合のどんな武力行使が、訴訟でどう評価、判定されたか」、
とかの実務知識で警察を啓蒙することである。

だが問題の解決、答えはやはり、警察がいかに抑制的にしかし効果的に、銃器を取り扱うか、
そのために銃取扱い規制にどんな手直しをするか、と言ったことに帰着する。

ソフトな方法を通して、保険業界も、警察官の公務執行方法の程度を改め、
そのレベルを向上させられるのであれば、そこに保険業界が、
「正直な第三者」
(an honest broker)として、係りうる立場にある、との考えを抱いている。


NPRは、警察の在り方に保険会社が影響を与えられるとする大学(UCLA)の
法律の先生のそのような言葉を引いて、この立場を裏付けている。

「保険会社は、警察が武力を行使する基準について、
正直な仲介人
(an honest broker)に間違いなくなれる。
これは、彼らが仕事に意欲的であり、彼らの収入に響いてくることからすれば、当然のことだ。
それだけに、ややもすれば色々な絡みから、改革を妨げようとする
他の政治勢力によっても左右されたり、妨げられたりしにくいアプローチと言える」

「そういった政治勢力の強い所、たとえばシカゴ市などでは、
保険の代りに莫大な市財政を投じてきているが、
その方向でも、今や警察による武力行使は壁にぶつかっている」


                               2016年4月20日