No.15

          
オバマ大統領が最初にサインした法律


先週は、オバマ大統領が前回(2012年)選挙で「どう戦ったか?」の絡みで、
「Juliaの人生」のドラマをテレビで流した話を載せた。

そこでは、民主党の票田として、「未婚の母」の重要さがポイントであった。

そのオバマ氏が大統領に就任して最初にサインした法律、
その成立の切っ掛けを作ったのは、Lilly Ledbetterと言う女性だ
(彼女も、オバマ氏が大統領になるために、一票を投じている)。

法律のポピュラーネームも、彼女の名を冠した
Lilly Ledbetter Fair Pay Restoration Act of 2009となった。
つまり、公正賃金回復法だ。


世界的なタイヤ・メーカーのGoodyearに20年近く働いていた彼女。
男の同僚と同一労働なのに、賃金がある時期からずっと少なくされたままで来たことを知り、考えた
(これは、上役が彼女に性的接近を働きかけ、拒まれたことから生じたとされる)。

全期間を通した差額の20万ドルは大きい。しかし、会社と争ったら、これまた大変なことは判っていた。
更なる不利な扱い、周囲の嫌がらせや、冷たい眼。

しかし、彼女はこれを、「正しいことを罷り通すかどうか」、の原理原則の問題だと考え、爭うことに決めた。


以来十数年、ことは遂に、合衆国最高裁にまで達した。

訴訟には勝てなかったが(訴訟は、時効に近い期間制限に絡んだ手続的理由により否定されていた)
その結果、本法が生れることになった。

本法をサインするに当り、大統領は述べている。


「この法律により、またしてもこの国の建国時の第一原則、平等、
そして誰もが己の幸福追及のチャンスを持てる、ということを掲げることになった
…アメリカの女性が平均して、今でも男の78%(黒人女性の場合は、更に下回る額)しか稼げていないこと

…この法律が、それを改善しようとするものであること、
それゆえ、私は単にLillyのためだけでなく、私や私の姉のために、
銀行で生涯働き続けた私の祖母のために、そして私の娘たちのためにも、サインした…」


最後に法的なことを一言付加すると、

本法は、男女、老若、人種、その他如何なる理由にせよ不平等を禁じる、
そういう意味での実質的なルールを新しく謳ったものではない
(そのような実質法は、既に色々と整備されている)。

上記の絡みでの期間開始の時点を、「差別」から「差別の効果」に拡げた。


                                     2016年3月24日