No.13

            
夫代りの国家(Hubby State)


1つ前に遡った2012年選挙でオバマ大統領はどう戦ったか。

Cnn放送(2012年5月9日)は、彼の選挙活動の1つ、
「Juliaの人生」と題されたテレビ広告(ストライド)を紹介している。



Juliaは、独立心の強いユッピー型の女性で、
公立学校から大学(college)を出てwebデザイナーになった。

今27歳で、余り先々のことまで煩わないでも、自由に生きていける。
と言うのも、いわゆるObama Careと言う健保(人工中絶までカバーする)が出来るからだ。

これは確かに、対抗馬の共和党候補ミット・ロムニーが大統領になったと仮定した場合よりも、
Juliaのような女性には好都合だ。

31歳になった彼女は、子供を産む決意を固める(その子の父、つまり夫はいない)。
やがて生れた息子Zacheryは、やはり公立学校でトップの座を目指す一方、
彼女自身も、自らのwebビジネスを立ち上げた。

67才になった彼女は、社保と健保のお陰で生活のことを心配することなく、
コミュニティでのボランティア活動をしている。




共和党の眼からすれば、これは馬鹿げた、「出来過ぎ」の話しになる。

現実は、幼児教育はアメリカでもさしたる効果を挙げておらず、
Juliaにしても、何万ドルかの奨学金債務を抱え込んでいるに違いないのに、
更に大学を出ても、失業の可能性だって半分くらいあるというのに。

しかし、ジュリア物語は現代アメリカの社会状況を映している。

その最たるものが、「未婚の母」状況である。2007年を境に、
未婚の世帯が、アメリカの世帯数の中の、
それも女世帯主によるものが、ナンバーワンを占めるようになった
(2012年5月11日のWashington Post紙も、独身女性が独身男性より、「1千万人多くいる」、としている)。


ここでの問題は、政治家が、大統領候補者も含め、
こうした状況、票田に注目しない訳には行かないということである。

同紙は、ロムニー氏が既婚女性で、より多くの支持を集めていた一方、
2008年選挙では何と71対29の割合で、未婚女性がオバマ票を集めたとしている。

このことに見るように、黒人と並ぶ民主党の最も頼りになる票田だとしている
(残る問題は、彼女らをいかに投票所まで足を運ばせるかである)。

そこで、オバマ氏によるJulia物語に戻ると、Juliaのような未婚の女性が頼りにするのが、

「夫のような(夫代りの)国家」(hubby state)である(Wall Street Journalの2016年3月3日)。

こうした記事を見る限り、アメリカは確かに変わってきている。


                                   2016年3月18日