No.11

                 
トランプ氏とメディアの扱い


日本のメディアでもかなり採り上げている「アメリカ大統領選」については、
なるべくブログをしないように考えていたが、今日はそのメディアと大統領選に絡んで、2題。



先ず、Breitbart News社(保守系)の女記者ミシェル・フィールドが、

「(私が襲われても)庇おうとしない会社には居られない…」
というツイートを載せて、会社を辞めたという話し。

しかも、その編集人Ben Shapiroも辞めた、とNPRは3月14日に伝えている。

Shapiro編集人の場合は、Breitbart News社の会長Steve Bannonが
会社の創立者Andrew Breitbartの名声も汚したとして、

「Steve Bannonは、ドナルド・トランプと言う「いじめ」の肩を持つことで、
Andrewの伝統を捨てて、会社をトランプ氏のプラウダ(かつてのソ連共産党の機関誌)にしてしまった。
それも、ミシェルを襲ったトランプの暴力的なキャンペーン・マネージャー
Corey Lewandowskiを擁護せんがため、自社の記者を見捨てた…」

ことは、3月8日(火)に行なわれたトランプの記者会見の場での出来事である
(その夜、トランプ氏は、更にミシシッピ州とミシガン州の2つの州での勝利を固めたばかりであった)。

ミシェル・フィールド記者によれば、

彼女がトランプ氏に質問しようとして、壇に昇りかけた時、
Lewandowskiに後ろから腕を掴まえられて、地面に引き倒されそうになったという。

彼女はことの重大性から、3月11日(金)には、
フロリダ州、ジュピター町にある裁判所に刑事告訴したという
(更に、日曜日Breitbart News社も、この件についてのミシェル・フィールド記者の話しを載せた)。

この件についての反響は、アメリカのメディアの底流で、その後も渦潮となって動いている。




第2は、トランプ氏の影がNPR自体にも及んでいることを示唆する問題である。

NPRで長くニュース解説者をしてきている、テレビなどでも広く知られた
Cokie Robertsに関することである
(時には、NPRの「生みの母」とも評されてきた彼女は、1992年に辞めてABC Newsに行っている)。

彼女が、もう1人別の解説者(実は彼女の夫で、ジャーナリストのSteven)と
共同執筆した新聞のコラムで、共和党内の良識派に呼びかけた

「トランプ氏のマーチ(進軍)を止めよう」

と言う記事が、NPRの社規に触れてないか、が問題となっている。

その社規とは、

「ジャーナリスト自らは、政治問題については右左の立場をとってはならない」
というものである。

この点で微妙に考えに入れるべきことは、
彼女がもう何十年も前に、NPR社員ではなく、数年前からは正式に
解説者(Commentator)としての契約になっていた点である
(その分、より自由に客観的なコメントができるし、そうすべき立場にある)。

「これまで見た大統領候補を目指すどの人よりも、その資格に欠ける
…仮に党の正式候補になったり、ましてや合衆国大統領に選挙されたりするようなことになれば、
世界中で合衆国自体の名声が、取り返しの付かない打撃を被るだろう…」

NPRは公共放送であるだけに、こうした問題につき、神経質にならざるを得ない。

上級副社長でニュース編集担当取締役Michael Oreskesも早速、
社内の牽制と社外PRのために色々と動いている
(その1つが、NPRの3月14日のこの点に焦点を絞っての、
“Morning Edition”番組でのDavid GreeneとCokie Robertsとの対談である)。


アメリカのメディア界には、トランプ氏に対してかなり広い範囲で反感があることも事実である。
しかもRobertsは、両親ともが、連邦下院議員をしていて
(父は、J. F.ケネディ大統領暗殺事件調査のため設けられたWarren Commissionのメンバーでもあった)、
公共問題につき一家を挙げて強い関心のある環境に育ってきている。


                                     2016年3月15日