No.70

               次の国防長官候補


トランプ氏が11月19日にニュージャージー州内で、
退役海兵隊大将
(four-star general)と会っている。

11月21日のCNNは、これを「次期の国防長官の最有力候補、
ジェイムズ・マティス
(James Mattis)との面談」、と伝えている
(“real deal”と、トランプ氏が2回も答えていることを伝える)。

この44年間の海兵隊生活をしてきたと言うマティスには、
期間を通して、広い範囲からその指導力に定評があるという。

やはり海軍軍人で、今は議会上院の軍事委員長
(chairman of the Senate Armed Services)
要職を務めるジョン・マケイン氏も、
この面談を積極的に評価する中で、ジェイムズ・マティス氏を絶賛している。

そのジェイムズ・マティス氏は、
南アフガニスタン(2001年)やイラクのファルージャ(2004年)など、
2回のいわゆるデザートストーム戦を含め、いくつもの戦を指揮してきた。
別名「狂犬」
(Mad Dog)の仇名を持つ。

NPRは、このジェイムズ・マティス氏のことで、
オバマ大統領の下で国防長官とCIA長官とを兼ねていたことのある
レオン・パネッタ
(Leon Panneta)氏にインタビューしている(11月23日)。

W.W.U当時のジョージ・マーシャル長官の例外を除くと、
これまで、軍人上りが国防長官を務めたケースはないことも、伝えている
(その点、文民統制、シビリアン・コントロールが存在してきた)。

彼は、トランプ氏がジェイムズ・マティス氏を国防長官に任命するとなると、
そのルールの例外となるとし、パネッタ氏もインタビューの中で、
「(アメリカは)政策権者
(policymakers)が軍をコントロールすべき…」
との信念を持ってきたと答えている。

それに現行法上、軍人は辞めてから7年経たないと、
国防長官の地位に就くことが出来ないから、議会の特別の承認を必要とすることになる。
パネッタ氏は、明確に反対をしてはいないが、こう言っている。

「いい助言者を閣僚に持ってくるかどうかの点と、チームのバランスの点が大事だ。
しかし、最後は自らの経験と勘だけからいえば、よくよく考えた方がよい。
3つ先、4つ先の手まで見通して、結果がどうなるか…すべて大統領の考え方次第だ。
いずれにせよ、最終責任を取るのは大統領だから…」

ここでNPRの記者は、2005年に、軍の兵士らとの懇談の中で、
マチス将軍が行ったという失言について訊ねた。

それは実際の戦闘について喋ったもので、
「撃ち合いになったら、人を殺すのは愉快だよ…喧嘩は面白いよ」
などと言った点が問題とされたものだ
(アフガニスタン戦でのことで、
「ベールを被らない女どもを殴るのに忙しい男らを撃ち殺す…」と言った文脈であった)。

NPRの記者がこの種の発言につき、
「アメリカ人一般は、何も心配しなくてもよいのか?」と訊ねたのに対し、
パネッタ氏は、「その場の雰囲気によるもので、心配ない」と答えている。

NPRの記者が更に、
「トランプ大統領になったら、この点はどうだろう」と訊ねた
(この点とは、トランプ氏がテロリストをすべて捕まえて、グアンタナモへ送り、
「水責め」などの拷問にかけると言っている問題である)。

「軍は、将軍らは、この水責めなどの命令を行うべきだろうか…」と問うている。

パネッタ氏の答え
「軍やCIAで働く人間は、大統領の命令に従う義務とともに、憲法に従うべき義務も負っている
…従って、拷問など、憲法や合衆国の法律に反するような行為に盲目的に従事する筈がない」
と言う。


                                 2016年12月6日