●ファンクを感じさせる音楽的な条件

今年に入ってから、ファンクを基軸にして1970年から1973年くらいの音楽を聴いてきた。
改めて聴きなおしてみた結果として現段階で言えることは、スティーヴィー・ワンダーの
《スーパースティション(邦題:迷信)》のように、メインのメロディと同じくらい印象
的な(ファンキーな)リフがある曲は、ファンクを感じることが多いということである。
ハービー・ハンコックの《カメレオン》のように、印象的なリフがヘヴィーなベース・ラ
インならば、よりファンク度は増す。ただし、どんなリフでもよいわけではない。上記に
あげた曲のリフに共通しているのは、ブルース・ロック的なフィーリングである。しかし
、まだ説明は十分とはいえない。クリームの《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》を例に
してみよう。この曲のリフは、メイン・メロディーと同じくらい印象的で、ブルース・ロ
ック的なフィーリングもあるといえるが、曲自体はファンクとは言い難いのである。

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■Cream / Disraeli Gears

 エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー
 ・ベイカーによるパワー・トリオのクリームの、《サンシ
 ャイン・オブ・ユア・ラヴ》を含むセカンド・アルバム。

なぜ先の条件は満たしていると思われるクリームの《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》 が、ファンクとは言い難いのか。クリームに、黒人ミュージシャンがいないからであろう か。あるいは、《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》が白人であるクリームのメンバーの ペンによるものだからか。ここで、もうひとつ例をあげてみよう。ステイプル・シンガー ズの1972年の全米No.1ヒット、《アイル・テイク・ユー・ゼア》である。下のジャケット 写真をみてもらえばわかるとおり、ステイプル・シンガーズは黒人の親子のグループだ。 《アイル・テイク・ユー・ゼア》は彼らの最大のヒット曲であるが、この曲でもっとも目 立つのは、最初から最後までほぼ同じリフを繰り返し弾いているエレクトリック・ベース なのである。ファンキーであり、ロック的なブルース・フィーリングも感じる。それに加 えてヴォーカルもソウルフルだ。しかし、ファンクとは言い難いのである。
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■The Staple Singers / Bealtitude : Respect Yourself

 ステイプル・シンガーズの名盤。ゴスペルやソウルと、
 カントリーやロックが混ぜ合わさったようなサウンドが
 カッコイイ。名盤。

《アイル・テイク・ユー・ゼア》が示していることは、メインのメロディと同じくらい印 象的、かつブルース・ロック的なフィーリングも感じるベースのリフを持つ曲で、その曲 をやっているのが黒人であっても、必ずしもファンクを感じるとは限らないということで ある。同じような例をもうひとつあげるなら、アーチー・ベル&ザ・ドレルズの1968年の 全米No.1《タイトゥン・アップ》という曲がある。この曲の主役は、ファンキーなベース のリフだ。しかし、この曲を聴いてファンクを感じるだろうか。逆に、マイルス・デイヴ ィスのグループやスライ&ザ・ファミリー・ストーンは白人と黒人が混在しているが、フ ァンクを感じる曲がある。つまりファンクを感じるかどうかは、演奏するミュージシャン の人種とは関係ないということだ。そうすると、ファンクを感じさせる要因は、曲そのも のにあるはずである。上述した条件に足りない条件はなんなのか。それを探ってみたい。
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■Archie Bell & The Drells / Tighten Up

 日本では、YMOによるカヴァーが有名なタイトル曲。
 こんなにもカッコよくグルーヴする演奏が、他にあるだ
 ろうかと思わず考えてしまう世紀の名演。