エレクトリック楽器を取り入れてからのマイルス・デイヴィスの音楽は、ミステリアスな 部分が多い。デイヴィスとファンクの関係について考えてはいるものの、そのようなミス テリアスな部分をそのまま通り過ぎてしまうことは、魅力があるだけに難しいのである。 『ジャック・ジョンソン』と『ライヴ・イヴィル』の間に行われた、エルメート・パスコ アールとのセッションは、その最たるものだ。パスコアールは、ブラジル人のミュージシ ャンで、ピアノ、ギター、フルート、サックスなど、なんでもこなすマルチ・プレイヤー である。生きている豚をサウンド・エフェクトとして使ったり、1979年に行われた野外フ ェスティヴァルの「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」出演のために来日したときは、日本 酒のビンまで楽器として吹きまくるという熱演に、その評価も真っ二つにわかれた。その ような異才がデイヴィスと絡むのであるから、無視して通りすぎるのは難しいのである。
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■Hermeto Pascoal / Slave Mass アメリカ制作の、エルメート・パスコアールのアルバム。 裏ジャケットでは、豚を”演奏中?”のパスコアールの 写真が確認できる(クレジットでは、アイアートが豚を ”演奏”したことになっている)。 |
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■Miles Davis / The Complete Jack Johnson Sessions パスコアールとの複数回のセッションを収録したボックス ・セット。参加メンバーやセッションの日付は、はたして 正確なのだろうか? |
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■Hermeto Pascoal / A Musica Livre De Hermeto Pascoal デイヴィスとの共演後、ブラジルに戻ってから作られた エルメート・パスコアールのアルバム。 濃密なパスコアールの音楽世界が堪能できる。 |
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■Michael Henderson / The Best Of Michael Henderson ブラック・ミュージックの世界では、ヴォーカリストと して有名なヘンダーソン。こういう音楽性の人が、デイ ヴィスのグループのベースを弾いていたところが面白い。 |
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■Miles Davis / The Cellor Door Sessions 1970 『ライヴ・イヴィル』の元が収録されているボックス・ セット。ファンク色が強くなった、グループの演奏に注 目である。 |