●スライ&ザ・ファミリー・ストーンのファンク

ハービー・ハンコックの《カメレオン》を起点として、メインのメロディ以上に印象的な
リフが主体になるタイプのファンクのルーツを辿って、いろいろなグループやミュージシ
ャンの曲を、時代をさかのぼって聴いてみた。そうすると、ジェームズ・ブラウンの曲は
パーツ型のファンクでリフ型とは異なったスタイルのファンクといえ、スティーヴィー・
ワンダーの《迷信》や、ニューオーリンズのミータ―ズの《シシー・ストラット》は、ハ
ンコックの《カメレオン》と同じようなリフ型のファンクということができそうだという
ことがわかってきた。そのような観点で、ミータ―ズの《シシー・ストラット》の先にあ
った曲を考えたときに、最後に浮上してくるのは、やはりスライ&ザ・ファミリー・スト
ーンである。彼らの4作目のアルバム『スタンド!』に収録されていた《シング・ア・シ
ンプル・ソング》という曲が、ファンキーで強烈なリフ型ファンクの元祖といえるのだ。

《シング・ア・シンプル・ソング》の最初のリリースは、1968年11月発売の全米No.1シン
グル《エヴリディ・ピープル》のB面である。ギターとベースが主体の、とてつもなくフ
ァンキーなリフが主役の曲だ。ミータ―ズやキング・カーティスにすぐにカヴァーされ、
ジミ・ヘンドリックスは黒人メンバーのみで結成したグループのバンド・オブ・ジプシー
ズのライヴで、自分の傑作曲の《ヴゥードゥ・チャイル(スライト・リターン)》とメド
レーで演奏している。マイルス・デイヴィスは、『ジャック・ジョンソン』に収録された
《ライト・オフ》のなかで、すこしかたちを変形して取り入れている。同時代の大物ミュ
ージシャンが、それだけヴィヴィッドに反応したことを考えても、強烈な印象を与えた曲
であることは間違いないだろう。しかし、もとに戻ってハンコックの《カメレオン》との
対比で考えると、同じタイプの曲とはいえるが、直接的な影響がみえてこない。

《カメレオン》に影響を与えた曲として、ハンコックはスライ&ザ・ファミリー・ストー
ンきってのファンク・チューンといえる《サンキュー》をあげているようである。確かに
《サンキュー》の影響は感じられなくもない。しかしそれは《カメレオン》の”ダダダ、
ズッタッタ”というベース・ラインの後半の”ズッタッタ”という部分のみである。前半
の”ダダダ”には《サンキュー》の影響は感じない。そこでさらに浮かび上がってくるの
が、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの初期のヒット曲の《ダンス・トゥ・ザ・ミュー
ジック》や《マ’レイディ》である。これらの曲の”ブリブリ”というヘヴィーなベース
・ラインの最初の数音は、《カメレオン》のベース・ラインの最初の数音と同じなのだ。
これらの曲のベース・ラインを聴くと、《カメレオン》のヘヴィーなベース・ラインの最
初の源になったのは、これに違いないと思ってしまうのだがどうだろう。

Greatest Hits ( Sly & The Family Stone )
cover
Released  : 1970

1.I Want To Take You Higher, 2.Everybody Is A Star, 3.Stand!, 4.Life, 5.Fun,
6.You Can Make It If You Try, 7.Dance To The Music, 8.Everyday People,
9.Hot Fun In The Summertime, 10.M'Lady, 11.Sing a Simple Song
12.Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)

※上記のイメージをクリックすると、Amazonにて購入できます