●ザ・ミータ―ズのファンク

スティーヴィー・ワンダーの《スーパースティション(邦題:迷信)》のように、リフが
主体となるファンクは、どのように生まれたのだろう。そう考えたとき、浮かんでくるの
は、ブルースを基盤にしたロックである。クリームやレッド・ツェッペリンといった、60
年代から70年代にかけて人気があったロック・グループの多くは、ブルースを基盤にした
ハードな音楽をやっていた。彼らがカヴァーしたブルースの楽曲の多くは、ヴォーカルで
歌われるメイン・メロディーと、ブギウギ・ピアノを参考にしたような強烈なギター・リ
フにより成り立っていた。クリームやレッド・ツェッペリンは、古いブルースのリフを大
音量で鳴らすことで現代に再生させた。スティーヴィー・ワンダーのように先進的な黒人
ミュージシャンが、再生されたブルースのリフ(いうまでもなく、もともとは黒人が生み
出したもの)から大きなインスパイアを受けたことは想像に難くない。

ブルース・ロックではなく、ブラック・ミュージックの流れのなかで強力なリフのファン
クといえる曲を《迷信》以前に遡ってみると、頭に浮かんでくるのは、やはりロックの影
響を強く感じさせる曲である。具体的には、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの《シン
グ・ア・シンプル・ソング》、ミータ―ズの《シシー・ストラット》といった曲である。
60年代から70年代前半に、新しい音楽を目指していたミュージシャンやプロデューサーに
してみれば、音楽的な意味でも、商業的な見地からでも、最新のロックの影響を受けない
ほうが難しかったであろうと想像する。エレクトリック・ギターがメインでフィーチャー
されるミータ―ズの楽曲は、とくにロックの影響を強く感じる。それでも《シシー・スト
ラット》は、やはりロックとはいえない。ロック的なフィーリングは強く感じさせるもの
の、フィーリングとして伝わってくるのはやはりファンクである。

《シシー・ストラット》は、メインのメロディと対応するリフという構造の曲ではない。
リフそのものが、メインのメロディーといってよいような曲である。ギターとベースで演
奏される、どっしりとしたリフの強力なこと。そのリフからは、ブルース・ロックの影響
を強く感じる。しかし、そこに彼らのトレード・マークといえる独特のリズムが加わると
、ファンクに生まれ変わってしまうのである。演奏のグルーヴが生みだしているフィーリ
ングは、ジャズでもロックでもソウルでもなく、やはりファンクとしかいいようのないの
である。このような刺激的な楽曲が、60年代に創られたのはショッキングだ。《シシー・
ストラット》をリアルタイムで聴いた多くのミュージシャンは、なんらかのインスパイア
を受けたことは想像に難くない。バンド・オブ・ジプシーズの演奏を聴くと、ジミ・ヘン
ドリックスも、ミータ―ズの大きな影響を受けたような気がするのである。

The Meters ( The Meters )
cover
Released  : 1969

1.Cissy Strut, 2.Here Comes the Meter Man, 3.Cardova, 4.Live Wire, 5.Art, 6.Sophisticated Cissy,
7.Ease Back, 8.6v6 La, 9.Sehorn's Farm, 10.Ann, 11.Stormy, 12.Sing a Simple Song

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